好意同乗!と損保が損害減額をいうのはなぜ? 平成19年4月17日
 

 車の同乗者が被害者になった場合、被害者に落ち度もないのに、損保会社は同乗していただけで過失を被害者に押し付けます。例えば、友人の運転する車に乗っていたところ、運転する友人が居眠り運転で、道路側壁に衝突し、同乗者だけが死亡した事件で損保の呈示は20%の減額を亡き被害者に押し付けてきました。ある事件では運転車が危険運転致死傷罪なのに、20%減額が損保の言い分でした。
 なぜ損保は車に同乗しただけで、『好意同乗』を理由に減額するのか?
 車に同乗しただけで減額される理由は、何なのか?
 以前から疑問に思ってました。損保のこのような態度はこの事件だけではないからです。
 被害者に過失があるわけでない同乗という事実だけで、なぜ損保は亡き被害者に過失を押し付けるのか、理解できませんでした。
 損保は当たり前のように減額をいいますが、その理由が説明されたこともありません。損保側の呈示文書にはどれも『好意同乗』とありますが、どうして同乗しただけで被害者に過失があるのか?と思っていたら、疑問に答える文献を見つけました。文献は『好意同乗に関する判例の研究』(交通春秋社)です。疑問が氷解しました。悪く言えば、損保による詐欺的取引です。
以下説明します。

1 原則
 文献『好意同乗に関する判例の研究』1〜2pによると
 『好意同乗に関する判例は昭和40年代後半から昭和50年代前半にかけて、無償同乗で大幅に減額する判例があったが、その頃でも無償同乗では減額しない判例も多数みられた(昭和51-4、52-7、54-2事例など)。そして年代が経つにつれて、無償同乗で減額を認めない判例が増加し、平成からは、無償同乗で減額しない判例が大勢を占めるにいたった。昭和51年から平成7年までの20年間において、好意同乗要素だけで減額を認めるか否か判示した判例は54件でその内、好意同乗で減額を認めた判例は20件(37%)、減額を認めなかった判例は34件(63%)であったが、平成元年から平成7年までの最近判例では、減額を認めた判例は3件(18%)、減額を認めなかった判例が14件(82%)と好意同乗による減額を否定した事例が多い。
 昭和50年代の前半では、好意同乗による減額を認める立場の判例とこれを認めない立場の判例が拮抗していたが、近年はこれを認めない立場に立つ判例が著しく増加し、判例の流れを見ると、この傾向は将来に向かってさらに進展するものと考えられる。しかしながら、示談の実務では(損保側は)古い判例を参考に、無償同乗を大幅な減額事由として取り扱う傾向があり、最近の判例の傾向と示談の実務との間には大きな格差がみられ、被害者の公平な救済が得られない状況にある。』と。
 古い判例は同乗しただけで減額ですが、平成になって無償同乗で減額を認めない判例が大勢を占めている。にもかかわらず、示談の実務では、損保側は古い判例を持ち出し、大幅な減額事由として取り扱っており、最近の判例の傾向と示談実務との間は大きなずれがありますから、損保側の詐欺的交渉が行われる示談にくれぐれも注意をしましょう。民事裁判でも、現在担当事件でも、損保弁護士は、好意同乗を理由に2割の減額を主張してきています。
 好意同乗だけで減額はされず、損保のいう『好意同乗だから』は嘘なのです。

2 但し、どんな場合でも同乗者が責任を負わないわけではない。運転に影響を及ばせば当然責任を負う。同乗で減額されないとしても同乗者が減額される場合が例外的にあるのです。同乗者に『非難すべき事情がある』場合です。
@ 同乗者は、一緒に飲酒し、その後ドライブに出かけ、運転者が飲酒していることを認識しながら、そのまま遠距離を長時間ドライブしながら、その間も缶ビールを飲んだりしているのに、飲酒や運転を止めるように促したりしていないので事故発生について、帰責事由が認められると30%減額をした(東京地判平10.6.24)。
A 若者だけの仲間による深夜ドライブ中、同僚車を追い越すにあたりハンドル操作を誤り発生した死亡事故につき、被害者が定員超過、かつ、加害者が終始1人で運転し疲労していたことを知り、またスピードを楽しむ雰囲気の醸成に関与していたと25%減額(東京高平2.3.28)。