『自動車による人身事故厳罰化』の理由を考える
(法定刑上限は10年か7年)
平成19年1月18日
 

 自動車社会では、これまで自動車事故が起きても、自動車は便利で、現代社会では不可欠なものとして、運転に過失があって、多くの人命が奪われても、社会にとっては社会的に相当な行為として『許された危険』の法理が通用してきました。

 他方、昨今の日本の交通社会では、飲酒運転、及び飲酒による人身事故の厳罰化はさらに厳しくなってきておりますし、道交法のひき逃げ犯の処罰の刑の上限も、1年→3年→5年と年々厳しくなってきています。警察庁が発表した先日の試案では、ひき逃げは10年とする予定のようです。ひき逃げの違法性は、当初に比べて10倍となった計算です。

 これらは、車社会での車に対する見方が、便利な道具から、危険な凶器へと価値観が変わってきたことにあります。悪質運転は、車を凶器として使用しているのです。したがって、自動車事故については、常に危険な凶器となる運転をする悪質運転が存在する以上、現在の上限5年という懲役禁固は、あまりに緩やか過ぎ、せめて10年にすべきです。

 日本の人身事故の実刑率は世界でも1番低くなってます。平成5年版犯罪白書(333p〜)によれば、実刑率はフランスの10分の1、韓国の4分の1です。あまりに交通犯罪者に甘いことを、同白書は指摘しています。原因は業務上過失致死傷罪の法定刑が緩やか過ぎることにあります。
 このため一定の悪質運転の犯罪については、2001年12月、危険運転致死傷罪として上限20年の刑を科することとなり、厳罰化されました。
 ところが、その後、危険運転致死傷罪の適用は、あまりに少なく、年間300件前後に過ぎません。業務上過失致死傷罪の年間検挙件数は90万件弱もあり、危険運転罪で処罰されない悪質運転の殆どは、5年以下の懲役禁固という甘い処罰で済んでいます。
 2001年以降、人身事犯の実刑率は改善されず、欧米や韓国並みになってはいません。
悪質運転者への厳罰化は、実は見過ごされてきているのが日本の実情です。よって、自動車による人身事故については、現行の5年はあまりに緩やかでしょう。

 また危険運転罪の成立当初は上限15年でしたが、その後の刑法全般改正により上限20年となりました。この時、他の一定の犯罪の刑も引き上げがありましたが、業務上過失致死傷罪の刑は据え置かれたままです。この改正との比較では上限5年は7年にすべきでしょうが、ひき逃げや飲酒運転致死傷罪とのバランスでは上限10年以上としておかしくはありません。