警察庁の道交法改正試案 平成18年12月28日
 

 警察庁の道交法改正試案が発表されました。
 飲酒運転の刑が一層厳しくなります。
 道交法の飲酒運転やひき逃げの2度目の厳罰化です。
 キーワードは、飲酒運転撲滅から飲酒運転根絶がテーマです。

1 飲酒運転者への罰則の再強化
 かつて2002年6月に、飲酒運転の厳罰化改正がありました。
 一つは酒気帯び運転の呼気中アルコール濃度基準の引き下げです。従来1リットル中0.25を、0.15ミリグラムと引き下げました。ビール中ジョッキ1杯で酒気帯びとなります。今回はこの引き下げはありませんでした。
 二つ目は、飲酒運転の刑の上限引上げでした。2002年の改正では、

  • 酒気帯び運転 3月以下懲役又は5万円以下⇒1年以下懲役または30万円以下
  • 酒酔運転  2年以下懲役又は10万円以下罰金⇒3年以下懲役又は50万円以下

 改正試案は、これをさらに引き上げ、飲酒運転者への一層の罰則強化です。

  • 酒気帯びは→3年以下又は50万円以下。
  • 酒酔いは→5年以下又は100万円以下。

(なお「酒酔い運転」は、酒気帯び運転と異なり、アルコール濃度と関係なく、「アルコール等の影響により正常な運転が困難な状態にある」場合です。直立不動が可能か歩行困難状態でないか、言語は正常かで判断されます。)

2 飲酒運転助長行為の禁止と罰則強化
 飲酒運転撲滅は、本人だけへの規制だけでは効果に限界があります。飲酒運転をそそのかしたり車両や酒類を提供する行為は、これまで刑法の教唆・ほう助罪を適用して取り締まってきたが、従犯扱いだったため、罰則は違反者の半分以下に過ぎませんでした。
 このため、助長行為のうち悪質な行為に罰則を新設しました。

  1. 飲酒運転するおそれのある者に対する教唆や幇助のうち、悪質な車両や酒類の提供行為の禁止と罰則と設けました。
    但し、提供を受けた者が運転をすることが条件です。酒気帯びで懲役3年以下、または50万円以下の罰金、酒酔いで懲役5年以下、または100万円以下の罰金になります。
  2. さらに、助長行為のうち、飲酒運転車両への同乗も禁止され、罰則が設けられました。酒気を帯びた者の運転車両への同乗禁止の罰則は、
    酒気帯び運転で懲役2年または30万円以下の罰金、酒酔い運転で懲役3年または50万円以下の罰金です。飲酒運転車への同乗禁止は、効き目があるでしょう。いままで一緒に飲んで車に乗っても罰せられないのが、いきなり懲役です。宴会文化を背景とする日本社会が変化するかもしれません。飲酒常習者対策の一番の切り札です。これからは、のんべぇで乗る人とは一緒に飲まない風潮となります。飲酒運転撲滅の強烈な対策です。

3 ひき逃げの罰則強化 罰則5年が10年に2倍。
 今回の改正の目玉です。いわゆる逃げ得を無くすために、救護義務違反(ひき逃げ)の罰則を2倍にしました。2002年改正でひき逃げの上限は懲役3年を懲役5年に罰則強化されたのですが、今回5年を10年に引き上げるものです。ひき逃げの刑の上限は10年になるのですが、これにより、危険運転を免れた場合の実際の運用の最大の刑(7年半)が15年までとなります。危険運転罪との刑の格差はかなり縮小されることとなりました。
 ひき逃げはこれまで当初の1年→3年→5年→10年と短期間で違法性が大とされてきた犯罪です。これほど短期間に国の法律が厳罰化されてきた犯罪はないでしょう。これほど短期間に違法性が変わるのは交通犯罪といえ異例でしょうか。

4 飲酒検知拒否罪の罰則強化
 30万円以下の罰金→3月以下の懲役又は50万円以下の罰金
 拒否しただけで懲役もあるということで自由刑ありとしたのは画期的。
 従来、検知されれば酒気帯び運転となるので、これを免れるために、検知を拒否する者が増えてました。したがって、これも逃げ得を防ぐ法律改正です。

5 その他

  1. 免許取り消し後の免許欠格期間の延長(5年から10年)
    免許欠格期間を10年にしたのは、まだ甘いというのが遺族の立場。一生免許を与えないでという人が多い。
  2. 後部座席のシートベルトの着用義務付け
  3. 高齢者のもみじマーク義務付け
  4. 幼児児童の自転車乗車時のヘルメット着用保護者に義務化

6 試案の課題

  1. 呼気中アルコール濃度基準の引き下げも検討すべきじゃなかったか。例えば、0.15mgを0.1ないし0.05までとか。
  2. 免許欠格期間も試案でも短すぎるというのが被害者の感覚でしょうね。