法の網をかいくぐる飲酒ドライバー、と許すシステム 平成18年10月2日
 

 飲酒死亡事故の遺族から相談を受ける中で飲酒ドライバーへの怒りと法の抜け穴に対する不信があります。厳罰化だけで済まないシステム改善が必要な問題です。飲酒ドライバーの違法性の意識のなさとずさんな捜査の利害が合致し、飲酒ドライバーを保護してます。摘発逃れ、実況見分逃れ、危険運転逃れ、と飲酒運転の入り口から出口までいろいろです。

1 摘発逃れ@ 『臭いがしなかったから検知捜査せず』事例 
 同乗者が飲酒し、臭いがプンプン。運転者も飲酒している、と強く推測される事件も、機械による飲酒検知をしていない例が非常に多いのに驚かされます。警察は『臭いがしなかったからアルコール捜査をしなかった』が言い分です。
 岐阜や大津等で発生した死亡事件が、私の担当した事件でありましたが、警察から言われた言い分は『においがしなかったから検知しなかった』でした。
 しかし、におい消し商品が多く出回っているのは、かかる臭いに頼る捜査の実情があるからです。『呼気検査に頼る』捜査でなく、『臭い検査に頼る』捜査なのです。
 酔払い運転者が常備品としている実情もあります。臭いを嗅ぐ捜査が日常的な警察の捜査は科学的捜査ではありません。日本で飲酒検査を呼気検査にだけ頼っている実情が問題です。諸外国では呼気検査の信用性がなく血液検査が原則です。呼気検査は聞こえはいいが、臭い検査も呼気検査の一種なのでしょう。手抜きの日本の警察が頼るわけです。
 コンビニで今売れている商品はにおい消し商品であり、薬局会社も勧める利益商品です。

 アメリカなどでは、呼気検査の信用性が低く、血液検査を必ずしなければなりません。
 例えば次の記事があります。
@アメリカの飲酒検知 
 女優兼モデルのパリス・ヒルトンさんが7日未明、ハリウッドで酒気帯び運転の疑いでロサンゼルス市警に逮捕された。ヒルトンさんの広報担当者も逮捕の事実を認めた。広報担当者によると、ヒルトンさんは慈善イベントに出席後、自宅に戻る途中だったが、不安定な運転のため警官に止められ、その場の検査で血液から規定を上回るアルコールが検出された。(AP)(09/08 01:42)

Aオーストラリアの飲酒検知
http://www.nichigo.com.au/column/sodan/2005/0512_law.htm
 【現在、NSW州で主に使用されている酒気検査方法は、警察が道路脇などで無差別に行っている酒気検知機を使用しての検査(Random Breath Testing=RBT)です。数値が法定基準を超えていた場合、その場で逮捕され、警察署に連行されます。通常免許証はその場で没収されます。警察署で再度血液検査が行われ、血中アルコールの正確な数値が計られます。そこで法定基準を超えていることが再確認されたら告訴され、後日治安判事裁判所(Magistrates' Court)で裁きを受けることになります。警察が規定のプロセスを踏んでいる限り、数値は絶対的な証拠とされますので、現実的には有罪を認めざるを得ないことになります。どのような刑罰を受けるかは血中アルコールの数値と初犯か否かによって異なります。また、個々人における状況や生活事情、事件背景によっても大きく異なります。ただし、最近の傾向として飲酒運転に対する裁判所の態度はかなり厳しいもので、例え初犯であっても刑の軽減を図るのはなかなか難しいものであるのが現状です。】

2 摘発逃れA 『怪我をしたというので検知検査せず』
 飲酒ドライバーが事故後、怪我をしたため病院に行っている場合、飲酒の呼気検査をされず、警察からは納得ある説明がされていない事例が非常に多いのに驚きます。茨木の河川敷道路で発生した死亡事故がバイクに危険運転罪の適用がない事例として報道されてますが、この事件は実は警察がアルコール検知をしていないずさん捜査の典型です。
 この種の事故は多数あるはずです。加害者が飲酒検知を免れた例の典型でしょう。
 私の相談事例でも山口で発生した会社役員の死亡事故では被害者だけの血液検知がなされていました。後に被疑者の飲酒の疑いが抜けず、『飲酒をともなわない送別会の帰り』という供述調書にこだわり、山口の飲んだ宅へ行って裏付けをして、挙句の果てに 現地現場検証に大阪の高裁裁判官3人が山口まで来てくれた事例です。

 ちなみに、次の事例もネットで探した友人が知らしてくれた例ですが、怪我をしたら飲酒がばれないのですかね。

京都新聞 コラム「点」(03.3.13) 飲酒チェック(けいはんな支局石川健一郎記者)
【酒気帯び運転の罰則強化などが盛り込まれた改正道路交通法が、昨年6月から施行された。しかし、先ごろ「腑(ふ)に落ちない事態」に出くわした。それは、京都府加茂町で起きた車同士の衝突事故。その際、当事者が口にけがをしていたため、現場で飲酒検知は行われず、詳しい事情聴取もないまま、救急車で病院に運ばれた。ところがその後、本人が搬送先で飲酒を認め、店も酒を提供したことを認めたが、現場で警察がチェックできなかったため、業務上過失の疑いで送検とはなったものの、「飲酒」については証拠不十分で立件されなかった。飲酒検知の限界について、警察関係者に聞いてみると「現場の警察官が検査をできる状況にあるかどうかにかかっている」と話す。今回の事故のように、人命が優先される事故現場では、呼気検査は行えないという。血液検査には、そのつど裁判所の令状が必要で、検査を行えるのも警察官のみ。搬送先の病院で検査することはできず、結局、事故の時は救急隊より早場に到着して、軽傷者に飲酒検知を行うしか方法がないのが実情だ。飲酒運転をなくすために罰則が強化されたはずなのに、病院に運ばれるような大きな事故では、それがチェックできない―。結果的に飲酒の責任が問われなくなる状況は、一刻も早い改善が必要だろう。】

3 摘発逃れB 『被疑者がいやと言ったから検知捜査せず』
 飲酒の取り締まり現場で、検知拒否する件数が500件に増加していると新聞が報じてます。飲酒検知拒否罪は罰金で上限30万円。酒酔い運転なら3年以下の懲役または50万円以下の罰金、酒気帯びでも1年以下の懲役か30万円以下の罰金と厳罰化。しかし正直に申告したらアルコールが検知されれば懲役もあるのに、検知を拒否すると罰金。
 これじゃ拒否する例が増えるのが当たり前。逃げ得を許す法律。政策が必要です。

『飲酒検知拒否罪、ビール20杯飲んだ容疑の男逮捕 2006年09月19日神戸新聞
 兵庫県警兵庫署は19日、飲酒の呼気検査を拒んだとして、バイクを運転していた神戸市兵庫区の無職の男(37)を道交法違反(飲酒検知拒否)の疑いで現行犯逮捕した。逮捕後の検査で呼気1リットル中0.8ミリグラムのアルコールが検出され、調べに対し「スナックで生ビールを20杯飲んだ」と供述しているという。 調べでは、19日午前1時5分ごろ、神戸市兵庫区西多聞通2丁目の市道で、兵庫署員が男に職務質問し、アルコールのにおいがしたため呼気検査を求めたところ、拒否したという。』

4 実況見分逃れ 
 飲酒運転者は事故直後の捜査が難しいのか、時間が経って実況見分がなされる場合が非常に多い。実況見分の日付で見ると、翌日なされている例が多い。通常の事故であれば、事故直後なされる実況見分を、時間が相当経過して捜査がなされるのです。
 被害者遺族にしたら、言い訳を考える時間を与えている、と遺族は思います。
 現実に言い訳が違う場合もあります。
 実況見分を翌日にした飲酒死亡事例は、尼崎で2件ありました。

5 危険運転逃れ
 逃げ得は飲酒人身事故でもあります。飲酒ひき逃げが危険運転罪施行後5年で倍増、年間2万件に。事故を起こして正直に警察へ言えば危険運転となるが、翌日出頭すればアルコールが抜け、業務上過失とひき逃げで処罰されます。刑の格差でいうと、業過致死傷罪やひき逃げは5年で、危険運転罪は上限20年で格差がありすぎる。刑の格差を知り飲酒ドライバーは逃げるのです。
 許されない理由は、飲酒をして、故意で飲酒運転をした挙句、衝突後故意で逃げて、さらに、危険運転を免れるために故意で翌日出頭する、と3重の故意があるからです。
 これじゃ、正直な加害者だけが危険運転罪となり、逃げるドライバーは業務上過失致死傷罪に過ぎません。
 先日の新聞では公安委員長が引き逃げを厳罰化する方向、と報道がありました。ひき逃げは02年に上限3年が5年に引き上げられましたが、さらなるひき逃げの厳罰化をしないと、酔っ払い運転の抜け道を防げないようです。危険運転逃れには、重ね飲みして立証妨害するケースや、水を大量に飲んで立証妨害をするケースもあります。