重度後遺症裁判(30) 家族介護費 珠玉の判例 平成18年7月18日
 
  1. 家族介護に関する判例の主流の考え方は、家族がいる場合、家族が当然に介護するのが原則であり、家族介護費は職業介護者と比較して半額(1日5千円〜8千円)程度です。
    ところが『将来介護の原則は家族介護でなく職業介護人による介護』とした判例があります。重度後遺症被害者にとって珠玉の判例に挙げられます。
    この問題はトピックで触れたことがあり、(トピックH13.2.21不当に低い介護費)で指摘したのは『なぜ裁判所は実態とかけ離れた介護費用の認定しかできないのか?判例分析は2つの基準。現実に近親者が介護にあたることが出来るかどうか決め、1日当り単価を算出。(1)近親者が介護出来る場合は近親者が介護すべきで、原則として職業介護の必要性はないとされ、(2)介護費用の単価は近親者で5千円位、職業介護者で1万円位で、近親者介護と職業介護者で2倍の格差がある。』 でした。その後、介護費単価は、これを上回る判例も出てきましたが、2つの基準の枠組みは同じです。
  2. ところが、最近になって、被害者家族に珠玉といえる判例が現れました。
    両上下肢麻痺等により、1級3号の会社員(59歳男子)の将来介護費につき、
    『妻(56歳)は稼動しながら介護にあたっているが、それは経済的負担を考慮しているにすぎず、本来であれば、職業介護人による介護を希望していることに照らせば、妻による介護と介護サービスとの併用を前提とするのではなく、職業付き添い人による介護を前提として算定すべき』と。
    実際は 原審認定の日額1万2千円から日額1万6千円に増額して【大阪高裁判決H16.6.10.自保ジ1550.12】判例変更をしたのです。
      重度後遺症被害者の介護の実態は、職業介護人による介護を希望するのがほとんどです。それが適わないのはぞんざいに扱われたり、時間が足りなかったり、ヘルパーの人との相性が合わなかったりといろいろな理由があります。
    しかし、介護家族の希望は職業介護人による適切な介護に間違いありません。 判例の主流の言い分のように、家族がいるから介護を家族だけで行うと希望する家族は皆無です。
  3. 被害者の立場に立つ介護費の認定判例は、稀かもしれませんが、それに近い判例も最近は出ています。
    @家族介護を主たる介護と従たる介護にわけ、母が介護で退職した場合に高収入を考慮し、主たる介護者母を1万3千円、父の補助介護1千円の合計1万4千円とした判例(H14.5.23.言渡し自保ジャーナル1457号2p)があります。これも介護費の高額化の判例の一つに数えられます。貴重な家族介護費の判例です。家族介護だけで1万4千円は、冒頭の判例が出るまではトップ級でした。
    A家族介護が原則だが、家族2人分の労働が実際に必要として2人分の介護費を認定した判例(自保ジャーナル1639.14p)。労働実質は、夫婦二人で介護しているとして1人6千円で2人で1万2千円とした。
    B将来介護を家族と職業付き添い人(多くが公的ヘルパー)との2人併用介
    護を認める判例は最近は多くなっています。家族がいても、ヘルパーとの併用を認めるようになってきているのは、支援費制度の普及によるかもしれません。
    介護の実質に応じて、家族介護自体の質の高さに敬意を表する判例は以上のように細かく認定されるようになってきています。