重度後遺症裁判(29)
公的扶助(役所の給付)あれば、損害とされないか?
平成18年5月27日
 

―将来介護費や介護備品の判決にみる暖かいキーワードを証拠に―
 重度後遺症の場合、支援費制度や公的給付があることで、生活が助かることは間違いありません。しかし損保側は将来介護費用や介護備品について、『公的給付があるから介護費や介護備品はそれを差し引いた金額にすべきと主張をします。多くの重度後遺症被害者は、公的給付を受けていますし、公的給付自体は、いろいろです。損害の分とされているわけではありません。
 現実は車椅子や家屋バリアフリー改造費、ヘルパー費など、公的支援に頼らざるを得ません。生活が優先するのですから。
 しかし、裁判になれば、弁護士や被告損保や裁判官からは激しい叱責を伴うかのような、クレームが待ってます。
 『給付があれば損害ではありません』 介護家族は、それが当たり前と錯覚し、公的給付分を損害として言うことさえ、はばかるようになり、裁判に消極的となります。
 しかし、公的給付があろうが、損害は損害として主張しなければ、損害の回復はできません。
 これについてどう論じるか明快に述べる本は見当たりませんが、被害者側視点からは次のとおりです。

1 将来介護費と公的扶助
『将来介護費は公的扶助を考慮すべきでない』とした判例が根拠資料となります。
たとえば【東京地裁判決H11.2.26.交民32.1.347 】は、四肢完全麻痺、膀胱直腸障害、日常生活全般にわたり、介護を要する被害者の将来介護費について、1週間に4日公的扶助による介助を受けているからこれを前提に介護費用を算定すべきとの被告の主張に対し、判決で『公的扶助と損害賠償は異なる理念にもとづくものであり、公的扶助があるからといって加害者がその分の介護費用の支払いを免れるのは相当でないこと、及び公的扶助が将来にわたって、確実に受けられる保障はない』と 被告(損保)主張を排斥しました。

2 介護備品と公的扶助 
 『公的扶助を考慮すべきでない』とした判例が根拠資料となります。
たとえば【名古屋地裁判決H14.3.25. 交民35.2.408 】は、 「将来の車椅子代につき、将来の公的扶助がある蓋然性が高く、これを考慮すべきである」との被告(損保)の主張に対し、判決で『原告らに対する公的扶助を被告らが賠償すべき損害から控除すべき根拠が明らかでないこと、及び将来も公的扶助が確定的に受けられるか否か明らか出ないことを理由に、消極に解(否定)し』 、公的扶助を介護備品の算定に考慮すべきでないとしました。