重度後遺症被害者裁判(28) 高次脳機能障害と意識障害
“医師意見書”
平成18年4月21日
 

損保が利用する反論資料(証拠)には医師意見書があります。

@損保の主張立証  医師意見書が出てくる場合。

等級を争う意見、
症状固定後のリハビリを不要とする意見(信じられないが本当)
ヘルパーを不要とする意見(家族介護だけで充分とする)
余命年数はわずかの年月とする意見(最高裁が根拠とした事例)など
いろいろな場合に損保側に利用される資料です。

 損保が良く使う手で、損保側の医師を使い、その意見を証拠として提出します。医師の肩書きは神経脳外科医の専門ですから裁判官に対する影響はきわめて大きいといえます。

Aまず主張(準備書面)で反論しなければなりませんし、反論の証拠も必要です。次のように反論します。

損保医師意見書への反論
 損保側が医師の意見書をもって『より低い等級である』と等級を争う事例では『医師が等級判定をするのは専門機関だけであって、書類を見ただけの医師に判断できるわけがない。患者を診ないで判断するのはあまりにひどい。』と。
 あるいは
『医師が患者を診ないで、カルテだけを根拠に症状を論じるのは医師法違反であって、患者を診て意見書を書くべきであり、患者を診ない医師の意見は信用できない。』
 あるいは
『脳障害は微妙で、複雑であるから数回診てから、意見書を書くべきであり、そうでない限り、信用性はまったくない。』
と医師意見書の信用性を潰すことをターゲットにすることがベストです。

 以上は主張(弁護士準備書面や原告陳述書)で述べることですが、証拠も当然に揃える必要があります。
 これも場合によっていろいろあります。 
 たとえば、後遺症の診断書を書いた医師の所見が作成できれば、医師の意見書に対する反論として十分となります。担当医に協力をお願いするしかありません。また、もう一つ突っ込んだ立証をしたいということならば、弁護士と依頼者との共同作業によって、答えやすいような尋問を作成し、それに応じて、医者が記載した回答書を用意して、対処すべきです。

 高次脳障害等で将来の監視や介護費用を請求する場合は、生活上のエピソードを書いてもらえば、説得力があります。

等級を争う意見書に対して
 『当該医師が等級認定機関に所属をしたわけでもないし、医師が等級認定をすることはそもそもない。医師の診断は症状を診るだけであり、等級は専門機関により行われるから、当該の医師の意見書で等級を云々することは、不自然であり、不合理である。』と反論します。
もっとも、実質的争いは労働能力喪失率ですから、労働能力喪失に絞って議論をした方がベストです。

余命期間を短く言う意見書に対して
 重度後遺症被害者の民事訴訟において、冷酷な争点が平均余命年数の問題です。 植物状態の被害者の場合、最高裁は昭和63年6月17日、7歳男児について余命40歳(通常77歳)としたり、平成6年11月24日32歳男性につき、平均余命を口頭弁論終結時から10年(通常45年)とした原審を支持しました。最高裁の実質的な根拠は、自動車事故対策センターの入所者のデータです。しかし重度後遺症の入所施設の劣悪な環境を考慮しておらず、数字のみを根拠とし、自宅介護者のデータ上の暗数を拾い上げておりませんから、データそのものが損保寄りです。医師の意見書が使われます。しかし、残り生存期間を残り20年とか10年とか正確に予測などできるわけがありません。
 『例えば、一般人に対してすら余命期間を宣言することはできないはずである。家族の手厚い保護と看護を受けている原告に対して、特定の余命期間を言える医者がいるのであろうか。健康状態からいうと、不摂生をする健常者と比べてはるかに健康的なのが介護を受けている重度後遺症被害者であろう。医療の進歩もあり、余命期間を自信をもって言う医者がいるとは到底思えない。』等、これについては判例もありますから、いろいろな反論が出来ると思います。

B 証拠
 反論の証拠として、一番いいのは担当医師の反論意見書です。ただ協力してもらうためには、丁寧な質問項目を作成し、答えやすいように尋問事項を作成することが必要であり、またお願いするにも家族の丁寧な依頼も必要です。
 この他にも場合によって資料はあります。事例に応じて考えることとなります。