犯罪被害者等基本保護法の具体施策をどうすべきか 平成18年4月17日
 

 法務省は各犯罪被害者団体のヒアリングを行い、現在、犯罪被害者基本保護法案の具体的施策の検討中です。交通事故被害者の立場では、立法や行政施策をどうしたらよいのでしょうか。被害者が声をあげる機会ですので、交通被害者の立場から問題点を整理します。

@ 犯罪被害者の対象
 交通事故の被害者が今回の対象となるのか一抹の不安があります。一般犯罪の刑罰の上限は10年が多く、業務上過失致死罪の上限が5年で過失犯なので、除外といううわさもあります。交通事故の被害者も含まれるべきです。

A 当事者権(質問。起訴。控訴。証人申請等)
 被害者を刑事裁判の傍聴人ではなく、当事者として制度化すべきです。
 ドイツでは被害者を加害者と対等にすべく、当事者権を認めています。

B 付帯私訴
 刑事裁判と民事訴訟が同時に出来る、いわゆる付帯私訴の制度化が言われています。制度の前提としては、捜査書類の事前開示をするなど被害者への適切な保障が前提だと思いますが、付帯私訴を認めることは現状では交通事故被害者に不利な面もあります。
理由=死亡事故の多くは、死人にくちなしと言われる様な、ずさん捜査が多く、捜査、つまり調書を争う事件が多いのですが、交通事故の刑事公判の現状は、被害者に不利な調書を問題とせずに、早く終わってしまい、付帯私訴にすることは被害者にとってメリットは少ない面があります。
 また加害者側である損保は事故からすぐに損保調査会社を通じて事故情報を知っているのに、被害者側は事故内容を知らないまま、刑事裁判に向き合わざるを得ません。付帯私訴による刑事裁判でも、交通事故裁判は、公正な捜査がなされているとはいえず、付帯私訴は不利益面が実は多いのです。

C 捜査情報の早期開示
 以上と関連しますが、被害者を当事者とすることに実効性を持たせるため、或いは付帯私訴を実のある制度にするために、捜査情報の早期開示を是非、制度化すべきです。アメリカでは実況見分から2週間後に実況見分調書を開示していますし、ドイツでは警察の捜査終了後送検時に捜査情報を開示しています。
 日本の被害者が捜査情報を知るのは、ずっと後であるのが現状です。例えば、刑事裁判になる事件も公判開始後にようやく知ることが出来るだけで、あまりに遅すぎます。被害者は捜査情報を知るのがあまりに遅すぎて、処罰手続き参加が実質保障されていません。
 また、刑事裁判にならない事件などは、起訴や不起訴の処分後に開示されて、知った時には既に刑事処分が終わっています。
 あまりにも被害者の知る権利を侵害しているのが、日本の捜査情報開示の現状です。

D 司法改革や公判準備手続き
 公判事件では被害者の意見陳述や謄写権がようやく認められましたが、最近公判準備手続きなる制度の導入によって、公判手続きが被害者抜きで早められています。その結果、被害者は捜査書類さえ見られずに、終わる可能性が出てきています。被害者の権利の実質侵害の状態とならないよう監視する必要があります。
 被害者にようやく認められた意見陳述や公判段階の謄写の権利も、このままでは無意味となる可能性があります。
 司法改革に被害者の視点が生かされるべきです。被害者の権利を犠牲にして、刑事被告人の権利や裁判の迅速化という利益を追求するのはやめるべきです。刑事裁判制度の改正にあたっては、必ず被害者の権利を侵害しないか、必ず検証すべきなのに無視されているのが実情だと思います。
 人身事犯は年間93万件発生し、うち1%が公判起訴という実情で、交通事故犯罪では刑事裁判の比重があまりに少ないといえまず。交通事故非犯罪化策があるためですが、この仕組みも改善する必要があります。そうでないと何時までも交通事故を軽く見る風潮が改善しません。