交通事故の被害者家族や遺族となった時の心構え 平成18年2月16日
 

 トピックは平成12年1月10日から開始し、6年で150を超えました。いろんな被害者問題を取り上げてきましたが、被害者側の行動の指針をあらためて説明します。
 システムの基本理解が必要と思う相談が多くありますので、まとめました。
 交通事故被害者となった場合、これからどうしたらよいか、考えるについての心構えは、@処罰政策 A捜査の現場 B被害者の立場 を理解し、頭に入れておくことで動き方も違います。

@交通事故の処罰政策
 交通事故は建前は犯罪ですが、現実は犯罪扱いをされません。そのため交通事故が軽く扱われる傾向にあるのが交通捜査です。
 原因の一つに政策の変更があります。昭和61年から、法務省と検察庁は人身事故をできるだけ処罰しない政策をとるようになりました。昭和61年迄は交通事故も一般犯罪並みの起訴率73%を40年維持してたのが、あまりに人身事故が多いことから1億総前科者を避けるとの名目で起訴率低下策をとりました。その結果業務上過失致死傷罪の起訴率は平成15年に12%まで急減しています。【人を交通事故で死傷させても不起訴が原則】との緩刑化政策があることを理解する必要があります。

A捜査の現場
 交通事故の捜査は一瞬の事故を再現する仕事ですから加害者の供述に頼らず,厳密な科学捜査をしなければ事故の再現はなりません。ところが警察官は20年増えないのに人身事故は45万件から90万件と倍増で、人手が慢性的に不足し、捜査能力に限界が生じています。科学捜査が出来る土壌でなくなっています。
捜査のやり方
 交通事故を軽く扱う政策と警察官の不足により捜査はきわめて事務的で、形式的となる傾向があります。特に死亡事故は被害者がいないので目撃者を探す努力も限度があり、道路や車の痕跡を綿密に調べる科学捜査を避けて、加害者の供述に沿う調べをすると言って過言でありません。

B被害者の立場
 死亡事故や重度後遺症事故の捜査は、被害者抜きで進められます。捜査内容や加害者の言い分や、目撃者のことなど、いわゆる捜査情報に関しては、遺族には一切教えられないと言われます。遺族になってみてショックを受けるのは、捜査内容がまったくわからないということです。目撃者がどう言っているかも教えてもらえません。捜査情報が少ない時は、特に被害者が悪いようにいう警察官もいます。
 遺族は思い余って、加害者と面談を求めることとなりますが、加害者はすぐに弁護士を立ててきて、弁護士を通じて話してほしいと逃げます。遺族としては、事故の真相がますますわからないとなり、目撃者探しをせざるを得ないのです。目撃者探しのチラシやビラは、かかる被害者遺族が真相を求めての努力です。 以上の実情から交通事故の捜査では加害者の言い分が大体通るとなります。特に目撃者がない事件は加害者の供述だけで捜査書類が作られます。
被害者への冤罪
 【死人にくちなし】の捜査がなされるのは以上の背景があるからです。一般犯罪では冤罪は被疑者である加害者ですが、交通事故では冤罪は被害者に多くあります。交通事故では冤罪が亡き被害者に押し付けられるのです。冤罪とは被害者の過失です。
 そのため捜査を疑い、独自に目撃者探しや調査をする遺族が多いのが実情です。被害者や遺族になってみないとわからない世界です。
捜査が終わっても
 捜査が終わっても、真実が開示されるわけではありません。
 副検事の段階や裁判になっても、被害者は真実を当然に教えてもらうわけではありません。
 運よく刑事裁判になる事件は刑事記録の謄写ができますが、それでも捜査に異議を言いたくても、刑事裁判は始まってますから取り返しがつかない場合が多いのです。 
 刑事裁判にならず不起訴となる場合は、不起訴後に捜査見取図(実況見分)だけが開示されますが、不起訴となって遺族がおかしいと考えても戦う材料は実況見分見取り図しかありません。目撃者の名前も住所も教えてもらえません。 遺族は無限のエネルギーを費やす現実となるのが不起訴事件です。真実開示の要請は不起訴率9割の交通事故犯においてより強い、といえます。不起訴事件の2次被害は真相を知らされないことによるものが大きいのです。

C加害者や弁護士からの接触や『示談』
 加害者はまず刑事事件に直面します。任意保険に入っていても、刑を軽くするため、示談をしたい、と申し入れをしてきますが、賠償という名目の裏にあるのは嘆願書や示談交渉をした事実で、刑を軽くすることが目的です。被害者側で民事をする場合は、加害者と交渉しない方法で、たとえば自賠責請求をしたりすることが大事です。この場合には、加害者等と交渉をする必要はありません。エネルギーは真相解明や厳罰を求めたい等の心情を裁判所や副検事に伝えることに向けたほうがいいでしょう。
 その次は、刑事処分が終了してから、生活体勢を整えてから、民事裁判をすることがベストです。