重度後遺症被害者の裁判(24)高次脳機能障害
C介護費は1級と2級だけか?
平成17年12月7日
 

 重度後遺症被害事件の特質を被害者は把握する必要があり、民事裁判でどんな問題がテーマか知れば対応も違います。高次脳機能障害の介護費認定問題を取り上げます。これに気がつかず裁判をする被害者や弁護士は多いようです。5年前の赤本にはありません。今の赤本に載っている新しい争点です。3級以下も介護費認定があることに着目すれば、症状固定時期から対応も違います。

 自賠責(算出機構)等級認定で介護費認定は、要介護の1級と2級とされますが、3級以下の高次脳機能障害では介護費はまったく認められないのでしょうか。自賠責で3級、5級、7級と認定された場合の不服申し立ては、通常等級決定に対する異議申し立てが手段です。しかし効果を狙うのであれば民事訴訟で別の争い方もあります。等級を前提に介護費認定を主張する方法です。等級を5級とされても介護費必要と主張するのです。介護費認定は通常は『介護を要する』1級か2級の認定がある場合ですが、実は3級以下で介護費を認定する判決が増えています。
(等級を争う場合は自賠責異議申し立てか、裁判で等級を争うかする。)

  1. 介護費の争点の重要性
     この争点は非常に重要です。毎日の介護費が認められれば、家族のストレスも金銭評価され、気を配る監視的生活を認知してもらいます。介護費が認められ、介護や監視が必要とされたり、何らかの形で家族の関与、生活の監視等必要とされれば、労働能力喪失割合も高めとなる可能性もあります。つまり5級でも一律の79%との数字が使用されるのではなく、80%以上の喪失割合となる確率があります。裁判の争点も『等級』 でなく、『 労働能力喪失率』の争いも加わります。事実、先日の大阪地裁で判決された依頼事件は、等級に一切触れず、労働能力喪失割合のみ判断したものでした。
  2. 原則
    介護費が認められる場合
     意識障害や高次脳機能障害の頭部外傷の後遺症では、自賠責等級認定は意識障害等1級認定で【常時介護を要する】、高次脳機能障害2級認定で【随時介護を要する】です。
     自賠責で介護を要するのは『常時介護』と『随時介護』の2つで、1級と2級が介護を要し、3級以下では介護要せず、介護費認定なしです。3級や5級の高次脳機能障害事案の示談呈示や調停や民事訴訟で介護費請求はしないのが実情です(数年前の赤本に記載なし)。
     しかし家族の苦労は実際金銭評価されるべきではないかが実情です。慰謝料で填補されるものでありません。高次脳機能障害では介護費を認定されるべき場合が実は多いのです。
  3. 受任事件から 
    ―広島地裁H17.7.14.判決言い渡し事例―
     広島の受任ケースは高次脳機能障害5級で紛争処理センター申立途中でした。紛争処理センター申立には介護費をありませんでした。センター調停案に納得がいかないと事務所を訪問されたのはてんかん時の補償がない理由でした。金額ではセンターの呈示額は1回目が6700万、最終1億円でした。裁判したらどうなるかも相談内容でした。判決での遅延損害金や弁護士費用を説明しました。判決による支払額は1億8500万円でした。センター案にない損害は @弁護士費用 A遅延損害金と B1373万円の将来介護費でした。
    ―大阪地裁H17.4.13.判決言い渡し事例―
     高次脳機能障害3級で自宅付近での日常生活に支障がないとされた事案で、将来介護費1日2千円が認められた判決です(自賠責を除く判決支払額1億2100万円)
  4. (将来介護費認定)高次脳機能障で介護を要する、と認定した判例
     判例を調べると3級以下の後遺症認定等級で介護費を裁判所が認定するケースが最近多くなってます。被害者側はこれに着目しなければなりません。
    【赤本から】
    裁判所のマニュアルである赤本を見ますと、2000年版では3級以下の事例では将来介護費の事例がないのですが、2005年版では、3例載っています。
      高次脳3級で1日6000円(H14.7.4.八王子支部)
      高次脳5級で1日3000円(H15.7.31横浜地裁)
      高次脳5級で1日2000円(H16.9.22東京地裁)
    【『高次脳機能障害と損害賠償 自保ジャーナル発行140p』から】
      高次脳7級で1日5000円(H12.2.9大阪地裁)
      高次脳5級で1日2500円(H11.1.25大阪地裁)
  5. 矛盾 (自賠責と判決)
     『高次脳機能障害と損害賠償』の本で【これらは介護が必要ではない等級と判断されながら介護人が必要であると判断されるという矛盾を抱える】(141p)と指摘されています。損保寄りの本ですが、問題点を鋭く指摘しています。しかし自賠責等級認定はマニュアルにすぎません。だから介護を要する場合は3級以下でもありえます。介護費を認定される場合は稀かもしれませんが、高次脳機能障害の多くが介護を要すると評価される場合も多く、家族は実情に応じて、裁判のテーマに持ち込むべきです。
  6. 『要介護』に代わる言葉の提言
     介護という表現は肉体障害について当てはまる言葉です。脳障害で介護という表現は意識障害は当てはまりますが、高次脳機能障害には適切でありません。高次脳機能障害にあえて使う言葉で何が適切か? 判例では『監視』『声かけ』等があるようです。
     介護に代わる表現は『常時の声かけと行動の指示』『行動の監視』『行動の管理』『 金銭の使途管理』 等が思いつきます。意図するところを考えれば、キーワードはいろいろ浮かびます。被害者を単独で行動させるには家族の手助けが要るのです。具体的な付き添いの介護までなくても家族の常時の心配と気遣い、声かけ、援助、等言葉を選び、かつ、生活全般について支援をしていかなくてはならないことを指摘する必要があります。