重度後遺症被害者の裁判のために(21)
高次脳機能障害事例では家族は何に気をつけるべきか
@刑事 警察の調べ
平成17年10月22日
 

 重度後遺症被害者の事件の特質を、被害者家族は把握する必要があります。
たとえば、刑事では警察の調べにどう対処するのか、また民事では事故で身体障害の後遺症と比べてどう違うのか、を理解して事件解決に臨めば、違います。

@ 警察の調べ

調書作成
 高次脳機能障害の刑事事件は、意外に被害者調書がとられていることがよくあります(警察としては意識障害ではないので迅速な処理のため、病院に来ることもあります)。気をつけなければならないのは、被害者本人がきちんとした感想や評価ができないのに、本人が対応できるとして、しゃべり、あるいは警察の誘導的尋問に応じてしまうことです。このため、被害者の過失が推定されることもありますし、そこまで行かなくとも相手については『特に強い制裁を望まない』 とか調書に記載されることで、罰金となる場合もあります。要するに被害者に不利な調書ができやすいのです。調書内容に気をつけるべき、ということです。気をつけても、家族がフォローしなければなりません。家族が横から口を出すと、警察『 見てないんだから黙っていてください』 と言われますが、家族『 被害者は頭部をやられているから、そのまま調書にするのはやめてください』と牽制する必要があります。被疑者から先に話しを警察は聞いてますから、加害者の話に沿うよう調書作成( 被害者にくちなし)の典型パターンとなるのです。

軽い処罰
 大阪府寝屋川市で発生したある事故(飲酒運転で、自転車に後ろから追突した事件、逃亡しひき逃げ)で、自転車に乗った男性が3級の高次脳障害被害に遭いました。
(等級認定は刑事処分である罰金が決まってから、ずっと後でした。)
問題は飲酒、ひき逃げ事件であるのに、刑事裁判さえなく、罰金で終わったことです。なぜ、かかる悪質な事故で被害も大きいのに、略式罰金とされたのか、考えると、本人の被害者調書があったから、と思われます。事故の前後のことをしゃべっているので、元気と思われたのでしょう。副検事は被害者本人には絶対会いませんから、調書を見る限りは被害の実態は( 軽い)と思うわけです。しかも他に被害者の厳罰にしてほしいとの上申書も出てません(家族はそれどころではなかったのですが)。

副検事にしてみれば、被害者調書があり、しかもそれ以外に何も被害者側から出ていない事件ですから、飲酒、ひき逃げ事件でも、罰金にしてしまっていい、となります。検察庁も正式裁判を避けられるので、副検事の処分がおかしいとはしません(不起訴奨励策もあります)。(後の民事事件で被害者の過失は5%でほとんどありませんでした。)
かくして、被害者は刑事処分で不利益を受けてしまうこととなるのです。

被害者の対策
 家族の名前で上申書を出すことが必要です。客観的に見た家族の事故の内容、それから、相手の誠意ある対応があるのか、本人の事故についての認識が正当と思われるのかどうか、
等です。 事故の瞬間は大体覚えていないのが普通ですが、高次脳の場合、覚えていることも一部あるので、意味もわからずしゃべることもあります。 警察の調書の内容は、後日しかわかりませんし、どういう記載となったか、そのときはわからないので、あえて事故内容や加害者の対応について、報告書を警察や検察に提出しておく必要があります。
 また、本人の調書を作らない場合には、家族に病院まで聞きに来ることがあります。いわゆる家族調書です。 家族は介護で忙しいですから、警察官の言うとおりに答えたりして、後で後悔する言葉や内容もあります。こういう場合は、即座に警察宛に上申書を出すことです。『 警察官の問いに対して答えたが、実際はニュアンスが違うので、文書で報告をします』 と。
 制裁の上申書を出す以外に、効果があるのが、署名です。署名の効果はこれまで書いてきましたが、副検事に対する監視効果と圧力効果がありますから、是非勧める対策です。
 高次脳機能障害事件で不起訴処分とされたある事件を現在取り扱い、不起訴不当の申し立てに検察も応じて、現在再捜査開始されました。ここからは、担当検事に正義感をもっていただくために、家族が何度も会うようにというアドバイスをして、その都度厳罰を求める署名を持参していますが、検事の対応は日を追う毎に丁寧になり、最近では( 危険運転で起訴も) と信じられないようなありがたい言葉を言われたようです。 結果はまだ出ていませんが、被害者の熱意が通じるような仕方をすれば、岩のような検事も動かすことができるということでしょう。