副検事と検察の改革 平成17年9月27日
 

交通事故遺族の受ける2次被害
 交通事故被害者遺族が2次被害に遭うケースを見てきました。2次被害とは事故後に被害者や遺族が捜査官・弁護士・副検事から被害を受けることです。遺族が2次被害に遭わないために何が必要かと尋ねられれば、次のように回答するしかありません。
 『良い警察官と良い副検事に恵まれ、刑事裁判で良い公判検事と良い刑事裁判官に恵まれ、民事で良い弁護士と良い民事裁判官に恵まれない限り、2次被害に遭います。』と。
 交通事故の解決過程では被害者と加害者の双方の利害、と処理システム側の3者の利害が交錯します。特に交通事故を軽く扱う風潮があり、被害者の利害よりも処理側の利害が強く働きますから、被害者の立場で解決されるのは難しいとなる仕組みがあります。そのため、2次被害に遭います。処理側の問題点のうち副検事について触れたいと思います。

副検事で占められる交通検察
 昭和61年まで全国の検察庁は交通部だけでなく、刑事部にも多くの副検事がいました。それが昭和61年に制度が変り、交通部に副検事が集中配備されました。61年は検察が変った年です。それまでは交通事犯の起訴率は一般犯罪と同じ73%でした。が、61年から3週間以内の傷害事件は不起訴と画一化され、多数の副検事を交通部に配置しました。圧倒的な事件数を処理する為です。それから交通事犯は軽く扱われ、多くの被害者や遺族が泣く事態となりました。刑事裁判によらず、罰金や不起訴が増えることとなったのです。交通事犯罪は副検事が検事に代わり、交通事故の処理を担当するようになったとたん、不起訴や罰金が増えたのです。交通犯の起訴率は、一貫して下がり12%まで低下しています。交通事故が軽く扱われる大きな理由のひとつが副検事問題かもしれません。

 公判起訴を嫌がる副検事 公判事件に熱意が無い副検事 捜査に熱意が無い副検事
公判起訴をすると、副検事は自分達が法廷に立つ必要があります。しかしこれを避けたいという副検事の本音があります。刑事公判法廷は、裁判官と弁護士という司法試験に受かり、一定の研修を受けた法曹がいます。しかし副検事は検事と違い、司法試験に受かっていませんし、事務官の延長の仕事です。ところが法廷では被害者のため制裁のため、弁護士や裁判官相手に対等の仕事をしなければならないのに、資格の差があるため、副検事は遠慮し、弁護士の言い分や裁判官に対して弱腰で、裁判官から何か言われると臆病です。平等であるべき法廷3者が初めから平等ではありません。刑事裁判での法廷の力関係こそが、交通事故を軽く扱う風潮を生んでいる元凶です。交通事故の被害者の2次被害は、刑事裁判の構造にも原因があります。
 公判検事の求刑も低すぎます。求刑を上回る判決事件が京都と大阪でありましたが、京都地裁判決『交通事故ではポケットティッシュより軽く扱われる命 』の藤田裁判官の言葉が遺族間で評判になりました。がよく考えると、検察の求刑があまりに低いのです。求刑を上回る判決というのは一般刑事事件ではありえません。交通事件を検察は軽く見ているから、2線級ピッチャーを配置するのです。正検事を配置する場合でもなりたて検事ばかりです。交通事故はいつまでも軽く扱われます。交通事故の刑事裁判で、被害者が仕事を期待してもそれができない副検事がいるため、被害者の声が裁判や処罰に届きにくい構造です。被害者に代わり厳しい制裁を求めるべきが、弁護人と裁判官に遠慮して厳しい求刑をせず、また弁護人と裁判官から異議を唱えられると言い返せません。これらの事実は、交通裁判を傍聴された遺族の大多数の感想です。
 つまり交通事故の刑事裁判は一般刑事裁判と違って、初めから被害者にとって不都合なシステムです。加害者の刑を軽くする為の法廷構造があります。だから加害者も弁護人も、刑事裁判は『実刑になんかなりっこない』となめてかかるといえます。交通事故を軽く扱われないためにも、交通事故を副検事が担当するのは止めてほしいものです。まず副検事職で占める交通部を止めてほしいものです。傍聴席の被害者や遺族が、検事席にいる副検事に代わりたいと願う場合がどれほど多いか、検察庁は知らないでしょう。

控訴の弱腰
 弱腰の検察モラルは、控訴にも表れます。刑事1審判決が出て、被告人が控訴することはあっても、検察側が控訴するのは数えるほどしかありません。1審判決が出た後で、遺族は控訴してほしいとの上申書まで書いて、被告人の刑の減刑に対して備えるのですが、副検事は多くの場合、遺族に控訴の希望さえ聞くことは有りません。控訴は仕事ではないと思っているのです。 
 民事は、被害者が控訴するのはよくありますが、刑事裁判で被害者側の検察が控訴するのは極めて稀です。理由は副検事問題です。公判検事が副検事で無い場合も、新米検事が多いため、副検事と同じように控訴に前向きではありません。キャリアを積んだ正義感に富む検事に当たることはまずありません。

監視されず、監督されない副検事 ― 検察審査会とは何なのか。
 起訴率の極端な減少政策が始まってから、【交通事故は不起訴】を原則が政府方針となりましたから、副検事が加害者を罰金にしても不起訴にしても、誰も検察内部で文句を言いません。被害者側が後に知っても、副検事へのクレーム対策は検察審査会への申し立てだけです。これが効果的かといえば、副検事に対する圧力にはなりませんから相変わらず不起訴としてしまう構造があります。不起訴記録は一部しか開示しないため、被害者が不服をいう材料を入手できません。証拠入手が初めから制約を受けているのです。しかも審査委員は半年が任期の全員が素人。事件を理解しだした途端に任期終了です。しかも対審構造ではありません。裁判形式ではありません。素人が書面審査をするのです。被害者の申し立てを聞いてやる、と。 これじゃ不起訴不当の結論はもちろん、起訴相当の決議はあまり出ません。このため、不起訴が不当とされるのはごく稀です。検察審査会は、検察に対する民主的コントロールだと言われますが、実はこの制度があることにより、検察の身分が逆に保証されている、と言っても過言ではありません。副検事の仕事に対する監督機関ではありません。副検事も検察官ですから、裁判官に等しい独立性が保証されています。このため仕事に問題があっても問題とされない仕組みです。 
 検察審査会制度の見直し改正を15年11月12日の毎日新聞朝刊が報じました。【検察審査会で起訴相当決議が2度あった時、弁護士に起訴権を与える】と。改正案は検察審査会が不起訴不当と決定しても、検察には何らコントロールが及ばないどころか、起訴相当も検察に対する強制力がなく、再度の起訴決定があって初めて強制力ありとするもので、検察審査会をなめています。民主統制になじまないのが検察なんでしょうか。あまりに不起訴不当等の決議に検察が影響をされないことで、検察審査会自体が検察へクレームをつけた記事を最近見ましたが、検察絶対観は、やめてほしいものです。

 他にも副検事の問題があります。『会いたがらない』或いは『加害者の味方か』と思える副検事の姿です。
 6年前、愛知の依頼者が『先生、副検事が面会に応じません。』と対策を相談してきました。同行して遺族の気持を少し伝えることができましたが、時間はわずかでした。当時、副検事は被害者遺族に面談すらしない時代でした。弁護士なら会うが遺族には会わないとの風潮が検察内部にありました。今でもその風潮は残ってますが、現在は遺族に対して、面談を正面から断ることは無くなりました。
 奈良の副検事の場合はひどい事例でした。示談しないことをまるで悪いようにほのめかす。『先生、副検事が示談をしたのかと聞いてきました。示談をしない私が悪いように言われました。』この事件が終了し、飲酒交通死亡事故の遺族。歩道内の建物敷地に車で突っ込み、男性を死亡させた悪質事故で、同じ副検事の相談。『先生、副検事がどうして損保に書類を提出しないのかと私を怒るんです。』次の遺族またまたM副検事の話。『先生、副検事が警察での加害者の言い分を有利に変えてます。とんでもない検事です。ねつ造です』と。偶然、同じ副検事が担当した事件を私が連続して担当しましたから副検事の質がわかりました。『検事交代を求めたらどうです。加害者の味方じゃないかと思う事件が連続して2つありました。おかしいです。検事交代申立てをされたらどうです』と言いましたら、検事交代が認められ、新聞とテレビで取り上げられました。

 副検事がどうしてこうなったのか、 捜査書類だけを見て、遺族に会いたがらない、加害者とは何度も会うが、遺族に会いたがらない、そのため加害者に情が移るんでしょう。おかしな副検事の話は奈良だけではありません。尼崎でも同じように加害者の味方じゃないかと思う副検事もいました。これも複数の事件の遺族の話から掴んだ事実です。博多の遺族のケースでは、公判1回目に被告人の名前をさん付けで呼んだため、検事交代の申し立てが認められたケースでした。遺族の署名を受け取らなかったため、検事交代が認められたケースもあります。
 これらの例は私が相談を受けたケースだけですから、全国規模で見ると、副検事による被害者への権利侵害は数多くあります。これまで、副検事は、検察の砦(捜査情報開示をしない。監視監督機関がない。)に護られてきました。だが、被害者遺族間の情報で、正体がわかるようになってきています。で、最近の遺族からの相談では、私が最初に聞くのは『副検事の名前はなんていうのですか?』。

交通事故被害者法案
 この夏、犯罪被害者保護法案に基づき具体的施策を検討するため、政府は全国の被害者団体に対して意見の聞き取りをしました。近いうちに枠組みができますが、この中に交通事故被害者を対象にした特別策が含まれる兆しはありません。原状制度の改善で済むのですが。
 交通事故の原状被害で犯罪被害者と違う点は副検事による2次被害です。刑事処理システムにおいて司法3者が平等に参加できる構造にすることも大事ですが、交通事故制裁が副検事を登場人物とする舞台現状を放置することが続けば、一層交通事故の被害者は軽く扱われます。
 交通事故処理システムを変える必要があります。副検事制度改革なくして、交通事故被害者の権利保護は達成できないといってもおかしくありません。交通被害者の声に耳を傾ける政治家がいるとすれば、副検事制度の改革に間違いありません。