中間利息控除利率3%は法律に反するとの最高裁判決を踏まえ、民事裁判をいかに戦うか?
―最高裁が法律の規定を根拠にするのであれば、法律を根拠にホフマン方式を被害者は選択すべきである―
平成17年7月20日
 

問題提起
 中間利息控除率は法定利率5%であり、3%や4%の計算は法律に反するとの最高裁判決が出た。3%ライプニッツ方式はもはや戦えない状況である。そこで5%ホフマン方式により逸失利益を計算する理論構成を考えました。死亡事故では逸失利益を争う重大争点の中間利息控除率が最高裁によって結論が出ましたが、原状の逸失利益のライプニッツ式計算は被害者に酷な計算であり、ホフマン方式によるべきだと訴えましょう。ライプニッツというのは、複利計算でありますから、利息が元本に毎年繰り入れられていきます。この結果、控除額が拡大するのです。これに対して単利計算のホフマンでは、それほど控除額は拡大しません。例えば20歳代の男性では2000万円以上の格差となります。

逸失利益の計算では、中間利息控除方法のうち中間利息控除利率がいくらかと言う問題と、単利控除か複利控除かという控除方式が問題となる。

中間利息控除利率
 中間利息控除利率は、最近の実勢金利を背景に2%〜4%とする判例が出ていた。現在の長期に亙る低金利状態と余りに乖離し、機械的に5%を採用したのではあまりに正義に反するので、経済実態に合わせ、5%未満で算定する判例(実勢金利論)である。平成12年12月26日、津地裁熊野支部は『低金利時代が続き、近い将来、預金金利が5パーセントに達するのは困難で2パーセント』とし、長野地裁は平成12年11月14日、「中間利息の控除は、将来受け取るべき金員を現在受け取ることによって、その受領した金員に将来の当該時点までの利息が生ずることにより、支払者に比較して受領者に有利になるという不公平を解消するためである。他方、民法で規定されている法定利率は、金銭消費貸借の不履行という面から定められているものであり、したがって法定利率をもって中間利息を控除する際の割合とすることには、格別合理的な根拠はない。」と実勢金利から3パーセントとした(東京高裁もその後、実勢金利論から4%とした)。そして実勢金利でなく、経済成長と名目金利の差である実質金利3%を超えないとして、中間利息控除率は3%とするという札幌高裁判決が出るに至った。実質金利論と言われる。
 これら中間利息非5%論に対する判断が、先日最高裁で出た。すなわち、『損害賠償額の算定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率によらなければならない』(平成17年06月14日 第三小法廷判決)
 最高裁が先日3%実質金利論を容れずに5%とした理由は、
 【我が国では実際の金利が近時低い状況にあることや原審のいう実質金利の動向からすれば,被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は民事法定利率である年5%より引き下げるべきであるとの主張も理解できないではない。
 しかし,民法404条において民事法定利率が年5%と定められたのは,民法の制定に当たって参考とされたヨーロッパ諸国の一般的な貸付金利や法定利率,我が国の一般的な貸付金利を踏まえ,金銭は,通常の利用方法によれば年5%の利息を生ずべきものと考えられたからである。そして,現行法は,将来の請求権を現在価額に換算するに際し,法的安定及び統一的処理が必要とされる場合には,法定利率により中間利息を控除する考え方を採用している。例えば,民事執行法88条2項,破産法99条1項2号(旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)46条5号も同様),民事再生法87条1項1号,2号,会社更生法136条1項1号,2号等は,いずれも将来の請求権を法定利率による中間利息の控除によって現在価額に換算することを規定している。損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するについても,法的安定及び統一的処理が必要とされるのであるから,民法は,民事法定利率により中間利息を控除することを予定しているものと考えられる。このように考えることによって,事案ごとに,また,裁判官ごとに中間利息の控除割合についての判断が区々に分かれることを防ぎ,被害者相互間の公平の確保,損害額の予測可能性による紛争の予防も図ることができる。上記の諸点に照らすと,損害賠償額の算定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率によらなければならないというべきである。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。】とする。
 以上の最高裁の理由は被害者間の公平や画一的取り扱いの要請であり、不法行為の基本理念に反する。不法行為の理念は加害者と被害者との間の損害分担の公平であり、最高裁判例のいう被害者間の不公平や画一的取り扱いの要請は不法行為の理念に基づく要請でなく、納得のいく合理的理由ではない。その意味で5%の中間利息控除利率説は不当と言わざるを得ない。実質金利3%が相当であろう。しかしながら、最高裁判決が法律に反すると断言した以上は、被害者支援として別の法律構成を考える必要がある。

中間利息控除方式としての単利運用方式ホフマンを選択するか、複利運用方式ライプニッツか
 最高裁判決を尊重し中間利息控除率5%に従うとしても被害者側が毎年1年毎に複利運用できると擬制するライプニッツ方式はあまりに不当であり、単利ホフマン方式によるべきである。単利運用方式ホフマン方式が合理的な中間利息控除方法とする理由を以下に述べる。

理由@

 上記最高裁判決は5%の根拠について倒産法で将来運用利率に関する5%規定があることを根拠とするが、これら倒産法は単利であって複利ではない。本来単利方式によるべきで、複利ライプニッツ方式は被害者にあまりに不利な運用方式を擬制するもので、被害者と加害者の損害分担の公平の理念に反し、採用されるべきではなく、単利方式であるホフマン方式によるべきである。

理由A

 最判平成2年3月23日言い渡し(判タ731・109)判決は、本件被害者と同じく年少である9歳児童の死亡逸失利益について、賃金センサスによる男子労働者の産業計・企業規模計・学歴計の全年齢平均賃金を基礎収入として、ホフマン方式により算定している。以下、判示内容を引用する。
「死亡した幼児の将来の得べかりし利益の喪失による損害賠償の額は、個々の事案に応じて適正に算定すべきものであるから、原審が、亡高橋洋介(本件事故当時九歳の男児)の将来の得べかりし利益の喪失による損害賠償の額につき、賃金センサスによる男子労働者の産業計・企業規模計・学歴計の全年齢平均賃金金額を基準として収入額を算定した上、ホフマン式計算法により事故当時の現在価額に換算したからといって、直ちに不合理な算定方法ということはできない。所論引用の最高裁昭和三六年(オ)第四一三号同三九年六月二四日第三小法廷判決・民集一八巻五号八七四頁は、右のような算定方法を違法とする旨の判示まで含むものではないから、原判例に抵触するところはない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。」

理由B〜F 記載省略します。

【解説】
中間利息控除率が3%か5%かという議論って何?
 本来の就労時に受け取るべき所得を、現在受け取ることによって、被害者側が将来の当該時点まで受領金を運用し、利息を得ると考え、その利息を中間利息といいます。

具体例
 57歳で死亡では67歳まで就労可能期間とされ、10年でライプニッツ係数は3%で8.5302、5%で7.7217で、1000万円の年収としたら、3%と5%の格差は生活費控除をすると(3割控除)560万円となります。
 27歳で死亡事例では、就労終期が40年で、3%で23.1147、5%で17.1590で、同じく500万円の年収で生活費控除3割とすれば格差は、8000万円と6000万円と2000万円に拡大します。

この格差解消のため提唱されたのが中間利息3%論です。

 3%中間利息論は大きく2つに分かれ、一つは実勢の金利に従うという実勢金利論で、津地裁、長野地裁諏訪支部、東京高裁で判決があった事例です(2%、3%、4%)。
これに対して、経済成長と名目金利との差が実質的金利として、中間利息は実質金利であって、この利率は3%を上回ることはない、として、いつの時代でも3%中間利息を上回ることはありえない、よって中間利息は3%とする実質金利論です。最近、二木雄策教授が法律学会で提唱されている議論で、札幌高裁が今年この理論を採用しまして、被害者側有利な3%実質金利論をとりました。
 ところが、先日出ました最高裁の判決はこれを否定し、5%中間利息控除説が正しいとしました。最高裁判決の意味ですが、いままで最高裁が判断をしてなかった中間利息控除率について5%が正しいとするものであり、かつ、3%説は法律に反すると明示しました点にあります。これによって、全国の裁判官はこれに反する判断はできないという拘束力が生じることとなりました。
 しかし、最高裁判決は、加害者と被害者の損害分担が不法行為の理念であることに照らすと、非常に疑問であり、被害者に酷な運用を課しているものです。画一的処理の要請は裁判所の都合であって、不当な判決だと思います。

逸失利益問題は、男女間格差問題、東京方式と大阪方式という東西間格差問題、中間利息控除問題があったわけですが、中間利息控除問題について、最高裁が立場を明らかにした意義があります。