重度後遺症裁判のために(19) 
入院中の介護の主張と立証の必要性
平成17年5月13日
 

なぜ入院中の付き添い内容を主張立証しなければならないのか。
入院中の付き添い介護費については、原状の民事裁判では何処まで主張されているか、というと多くの訴訟事件では詳しく書かないし、具体的な立証がされていません。
しかし、現実には入院中の日記や付き添い報告をすることが必要な場合も多く、主張立証は詳細にしないと、裁判所は認めてくれません。厳密かつ詳細な立証が必要な理由はつぎの通り。

完全介護体制と主張責任立証責任との関連

@ 病院はかつて介護体制にありませんでした。このため、病院内に家族がヘルパーを入れる場合もありました。しかし、平成7年頃前後より、病院はシステムとして完全介護体制となりました。このため、病院内に専門のヘルパーを置くことが不可能となったのです。
すると完全介護体制の病院での付き添いは何か問われることとなりました。つまり主張責任や立証責任が被害者側にあり、入院中の詳細な報告が必要となったのです。
つまり付き添いや介護看護は病院の仕事とされ、家族の仕事はないとされたのです。
付き添い認定は例外であり医師の介護付き添いの指示書面がないと、付き添い不用となったのです。
これは現実には非常におかしいシステムで、重度の場合には、危篤の場合もあり、家族が付き添い、介護もするのが、自然の人間であり、情です。しかし、システムでは、病院が介護をし、家族はしないとされています。
実際、裁判での損保の主張は『付き添いは医師の指示がないと認められない』です。立証面でも、このことが被害者にとって負担となり反映されてきます。つまり医師も看護婦も完全看護を前提としてカルテや看護記録を作成します。そこで被害者は

医師とカルテを疑う

完全看護体制ですから、医師がことさら介護の必要ありとカルテに書きません。しかも、損保側は医師の指示が必要と主張します。
しかし、現実には看護婦等から『付き添っていてください』と言われ、病院も『家族の付き添いがないと、入院は受け入れません』と言います。家族の付き添いを条件に受け入れるのです。

カルテ

カルテに医師の指示はないのが通常です。むしろ、カルテ、診断書に予想せぬ記載ある場合もあります。たとえば、カルテに『付添介護を要した期間がなかった』と診断書に記載されたため、付添人の行なうのは、軽介助にすぎなかったとされ、付き添い費ゼロとされた判決例【名古屋地裁H14年3月25日言い渡し】もある。この点は、判決が不当であり、本来は【医師の指示がなくても受傷部位や程度によって客観的に付き添いの必要性が認められる重傷の場合は、付き添いが認められる】(注解損害賠償算定基準3訂31p)とすべきはず。裁判官は書面で決めつけたがるのでかかる判断となったのでしょうが、こういう判決を書く裁判官の常識を疑いますが、立証責任の原則では被害者にリスクがある以上、入院の介護報告を詳細にする必要がある所以です。

看護婦と看護記録を疑う

付き添いの必要性が認められたとしても、付き添い費はマニュアル化され、低額です。ところが、実態は24時間介護もあれば数時間の付き添いもあります。被害者側は、介護の詳細な主張をしないと、低額な介護費認定に甘んじるしかありませんから、詳細な介護日誌をつける必要があります。実際には、メモでもいいのですが、後日裁判になれば、看護日誌を見ながら、日記を後日清書することとなります。
入院中の実際は、検温や対向変換を家族がしながら、看護記録では、検温や対向変換を看護婦がしたとされている場合がありますから、カルテと看護記録を取り寄せる前に、裁判所に報告書を提出し、看護記録を取り寄せ後、詳細な日記を作成し、提出する必要があるのです。看護婦が看護日誌に家族がなした介護作業を看護婦がしたと記載するのは、完全看護システムが前提だから、家族がしたと記載できず、看護婦がしたとするわけですね。
特に重度の場合には、家族がマッサージをした方がいいとされ、その方法も早めに教えられるのが通常なのに、マッサージや声かけ等の家族の労力は記載されていません。看護記録には家族の介護作業は記載しない場合が多いのです。
病院によっては家族の介護作業を故意に書かない場合もあります。完全に家族に任せる病院ほど記載しません。このため、実際に病院の形式的看護の様子を24時間ビデオで立証したこともあります。このときの入院付き添いは通常ならば1日5千円〜6千円と認定されるところを、1日8千円と高額認定されました。

将来の介護費高額認定のために入院付添いの詳細説明が必要

入院中の介護の主張立証するのは、将来の介護費用の立証のために入院中の付き添い作業を説明する必要もあり、将来介護費の高額認定のためには必要な説明となります。これが意外に見落とされています。
意識障害の場合は、入院中の介護作業は、自宅介護後も連続する介護作業であるので、病院の介護作業を説明しなければ、自宅介護の説明ができないことを肝に銘じる必要があります。逆に入院付き添いの労力の状況を説明すると、自宅介護の労力の説明がスムーズとなる側面があります。
高次脳機能障害の場合も、入院中の介護作業を説明し、情緒の変化や人格変化を付き添い日記で補えば、症状や付き添い、監視の必要性が説明しやすくなるのです。