危険運転致死傷罪は、はたして適切に運用されているのか? 平成16年12月27日
 

 危険運転致死傷罪ができて3年が経ちました。処分のデータも出揃うようになりました。
 2004年版犯罪白書によれば、平成15年度の検察の最終処分事件の内訳は、交通関係業過致死傷事件で89万件であるのに対して、危険運転致死傷罪事件は、332件となっています。危険運転罪の業過件数に対する割合は、0.037%にすぎません。あまりにも少なさすぎます。どうして、こんなに検察の適用が少ないのでしょうか。
 もともと、『正常な運転が困難』だとか法律自体の抽象性がありますが、これ以外のシステムの問題はないのでしょうか。

原因1)初動捜査において、警察や検察が危険運転罪で捜査する体制になっていない
 大阪の飲酒業過致死事故で、『飲酒により正常な運転が困難』な危険運転なのに業過致死で処罰されているケースを取り扱いました。飲酒検知で2時間後に0.4mgでしたから、事故時は0.6mgあると推定されます。しかも飲酒により眠けを催し、その後発進した時にアクセルとブレーキを踏み間違えた、と自白していました。明らかに飲酒により正常な運転が困難な事例で危険運転致死罪です。
 ところが、検察の言い分は『赤信号無視でも暴走運転でもないから危険運転ではない』と訳のわからない理由でした。警察の言い分も『ふらふらしてなかった』という消極的理由でした。しかし、判例を調べると『アクセルとブレーキを踏み間違えた』例が飲酒運転での危険運転の典型例となってました。警察の段階で被疑犯罪を間違っているのです。危険運転で捜査すべき事案でした。検察も捜査の監視役になっていません。
 北海道の相談事例でも、制御できない高速度運転による死亡事故を業過事件で処理されてしまいそうだというケースがありました。これは遺族の多数の署名活動を経て、ようやく検察で業過事件から、危険運転事件へ変更となりましたが、署名活動をしてできた法律の適用を願ってまた署名をする、そういう図式で危険運転が適用になったケースです。
 どういうのが危険運転であるのか、現場の警察官や検事が普段から研究を要する犯罪であるのですが、どうも研究不足の感は否めません。

原因2)厳罰を願う者は、誰か。被害者だけが厳罰を求める構図
 かつて業過事件の法定刑が3年から5年に引き上げられ、厳罰化の法律ができた昭和43年以降、99万人だった被害者は減少の一途をたどり、60万人にまで激減しました。
 ところが、今回の厳罰化による被害者数の傾向はどうなったかというと、高止まりのままで減少傾向はありません。危険運転致死傷罪の成立前で、加速度的に増加した被害者数は118万人でしたから、昭和50年ごろに被害者数減少のピーク時60万人の倍のままです。
 かつての厳罰化の影響は、官民あげて『交通犯罪の撲滅を』が、キャンペーンでした。ところが、今回はどうもそうではないようです。警察は及び腰、検察はもっと及び腰。そういう図式が成立している中で、危険運転致死傷罪の運用があります。どうして及び腰なのかというと、業過犯罪自体の緩刑化を検察や法務省が進めているからです。
 交通犯罪の起訴率を7割から1割とすることにより、検察や警察の仕事を減らす事のみを目的とした挙句、今危険運転致死傷罪ができても適切な運用ができるわけがありません。
 及び腰のままの検察と警察に、危険運転の適用を委ねる被害者に、しわ寄せがくるのです。