札幌の青野弁護士の書面で認定された中間利息3%札幌高裁判決 平成16年8月30日
 

北海道より再び 被害者の声による民事裁判の革命(HP13年1月18日)

平成16年7月16日札幌高裁が、なんと終息したかに見えた【逸失利益の計算における中間利息の控除率】を3%とする判決を言渡しました。札幌青野弁護士の非常に長く説得力のある準備書面による判決であり、末永進、森邦明、杉浦徳宏の3裁判官の合議による判決です。HP13年1月18日、被害者の声による民事裁判の革命として述べた問題です。その後の中間利息控除に関するトピックを見れば、判決はすばらしいものとわかります。東京高裁4%判決後、非5%の判決は東京地裁や東京高裁では出なくなりましたので、下級審ではこれに抵抗を示す裁判官がいないのか、と思われてました。それが今再び被害者の声に耳を傾ける裁判官が出たのです。説得した青野弁護士もすばらしい。まさに、再び民事裁判の革命が起ろうとしています。

最高裁の判断  「非5%」での上告・上告受理が認められなかったケースはいくつもある。(例、赤本引用の最判平成12・7・17)しかしそれは「適法な上告理由にあたらない。」の判断にすぎない。青野氏によれば「中間利息控除率そのものは、損害認定(=事実認定)問題なので、最高裁は積極的には口を出さない、との意味であり、最高裁が実体判断として『5%以外の数値を使ってはいけない。』の積極判断を示したことはなく、中間利息問題は『白紙』である」とのことでありますから、最高裁がこの点を5%と判断している、との損保側弁護士の主張があるとすれば、間違いとなります】

(札幌高裁の判決趣旨)
 逸失利益の計算における中間利息の控除率について判断するに、交通事故によって生じた逸失利益の現在価値を算定する方法については、法定の計算方法が定まっていないところ、逸失利益算定の基礎収入を被害者の死亡時又は症状固定時に固定した上で将来分の逸失利益の現在価値を算定する場合には、中間利息の控除利率を裁判時の実質金利に従って計算するのが相当であり、これを5パーセントの利率に従って計算することは相当ではないといわざるを得ない。
すなわち上記逸失利益は、交通事故による被害者が交通事故に遭わなければ将来において得ることができた収入であり、その現在価値の算定をする上で中間利息を控除することが許されるのは、中間利息を控除してもなお、将来にわたる分割支給に比して不足を生じないだけの経済的利益が一般的に肯定されるからにほかならないところ、経済的利益において不利益がないと一般的に肯定されるためには、被害者が中間利息控除後の一括金を受給することによって、少なくとも名目金利と賃金上昇率又は物価上昇率との差に当たる実質金利相当の資金運用が可能であると一般的に判断し得ることを要するというべきである。こうした被害者による実質的金利相当の資金運用可能性を判断する要素として、民事法定利率についての民法404条を考慮することについては、同条が利息を生ずべき債権の利率についての補充確定であって、実質金利とは異なる名目的金利を定める規定であることから、同条が年5パーセント(年5分)の利率を法定しているというだけでは、実質金利の基準とすることの合理性を見出すことはできないといわざるを得ない。
また、破産法46条5号ほかの倒産法や民事執行法88条2項が弁済期未到来の債権について民事法定利率による中間利息の控除を認めていることについては、それらの規定がいずれも利息の定めのない債権についてのもので、かつ、 弁済期の到来していない債権についての規定である点で、弁済期が到来し、かつ、不法行為時から遅延損害金が発生している逸失利益の賠償請求権とは、その対象とする債権の性質を異にしており、類推又は各法条の趣旨を援用する前提を認めることができない。なお、上記各法条の場合と本件逸失利益算定の場合とは、いずれも将来を予測するという点で共通する要素を認め得ないではないが、逸失利益については将来の収入について裁判時に認定される基礎収入を固定した上で算定するという前提を採る限り、上記破産法等が規定する債権と同列に扱うのは相当ではない。上記破産法等が規定する債権については、無利息債権についての期限到来までの利益として折り込まれた期限未到来債権額相当部分を名目金利である法定利率相当額とみなすことに一応の合理性が認められるのに対し、裁判時に認定された基礎収入を固定して算定される逸失利益の現在価値を算定する上で、将来分の利益を名目金利に従って控除する合理性は認められないからである。
さらに、1審被告は、交通事故を原因とする損害賠償請求事件の過去における圧倒的多数の裁判例が、逸失利益の現在価値の算定のための中間利息控除率として年5パーセントの法定利率を採用してきた旨主張し、そうした過去の判例の蓄積による法的安定性が維持されるべきことを主張するところ、確かに過去の裁判例の圧倒的多数のものが中間利息控除率として年5パーセントの法定利率を採用してきたことは顕著な事実であるけれども、そのことをもって、中間利息控除率として年5パーセントの法定利率を採用してもなお、将来にわたる分割支給に比して不足を生じないだけの経済的利益が被害者に与えられたと一般的に肯定し得るものと断じることはできない。
 そこで、本件における亡被害者の逸失利益の現在価値を算定するための中間利息控除率としての実質金利について具体的に判断するに、甲第15号証から第21号証及び第46号証によれば、我が国における昭和31年(1956年)から平成14年(2002年)までの47年間における定期預金(1年物)金利(税引後)と所得成長率との差がプラスとなった年は16回で、マイナスとなった年は31回であること、そのうちプラス2パーセントを超えたのは3回(最大値はプラス2.3パーセント)で、マイナス5パーセントを下回った年は16回(最小値はマイナス21.4パーセント)であり、全期間の平均値はマイナス3.32パーセントであり、直近の平成8年から平成14年までの期間の平均値は0.25パーセントであることが認められる。これによれば、実際の実質金利の動向と年5パーセントの法定利率とが著しく乖離していることが明らかであり、実質金利について、少なくとも年3パーセントを超えることはなく、将来における変動を考慮しても中間利息控除率として年3パーセントは十分に控え目な率であるという1審原告らの主張は、合理性を有するものと認めることができる。
したがって、本件において、亡被害者の逸失利益の現在価値を算定するにあたっては、中間利息控除率として年3パーセントを用いるのが相当である。
なお、1審被告は、死亡した被害者(年少者)の逸失利益をその両親が相続するという構成は極めて擬制的であって、被害者(年少者)の逸失利益が本来であればどのように費消されるかは全く予測不可能であるから、中間利息控除率についてのみ1審原告らの主張に係る計算をすべき合理性はない旨主張するが、年少で死亡した被害者についても将来における稼働収入を失ったものと判断するのが相当であり、死亡者の逸失利益相当損害額の賠償請求権をその相続人らが相続し得ることについては判例も確立しており、年少者については、将来に対する予測困難な事情が多数あるとしても、そのことをもって、実質金利としての実態を有しない年5パーセントを中間利息控除率として用いる根拠とするのは相当でない。そして、中間利息控除率として年3パーセントを用いることは、上記実質金利の動向に照らして十分に控え目な方法であるというべきである。

【青野弁護士の主張書面内容】
準備書面(PDFファイル・サイズ3.59M)
報告書(PDFファイル・サイズ9.45M)