事件簿 民事 過失相殺
―左折トラックによる横断歩道死亡事故
歩行者に注意義務があるか―
平成16年8月3日
 

信号のある交差点で、左折トラックによる左折中の横断歩道上の歩行者(自転車)が、轢かれる事故が後を絶ちません。 東京の長谷さんという遺族は、お子さんを事故でなくなされて、時差式信号の設置を訴えられ、以降長谷さんの呼びかけに応え、全国で設置されるようになりました。
これは行政上の問題ですが、法律上は、歩行者もトラックも青の時、歩行者に過失がないか、時々問題となります。
民事裁判事例で、歩行者に注意義務違反があると損保から言われ、それに従う判決もあります。
中には被害者いじめと思える判決をもらったこともあります。(たとえば、神戸地裁尼崎支部14年10月30日判決は横断自転車に5%の過失を認定したが、理由の一部は【運転席から死角になっていた】としている)。青信号で、横断歩道を渡っているのに、過失を5%でも認めるとは。被害者遺族からみればとんでもない判決です。

先日もらった判決(平成16年7月13日大阪高裁)は、たとえ、死角にあろうとも、運転者には重い注意義務があると認め、明確に横断歩道を渡る歩行者に注意義務が無いことを明記しました。損保と戦う遺族のために、その一部をお伝えします。
『控訴人らは、原判決では過失相殺を認めなかったことは失当であると批判し、(横断歩道上の)歩行者にも事故を回避すべき注意義務がまったく免除されるわけではなく、亡き被害者の通過方法は、運転手からは死角に入りやすいことから、同車両の直前ではなく、少し距離をおいて通過すべきであったとして、過失相殺されるべきであると主張する。
控訴人らの主張は、歩行者が横断歩道上を青信号に従って横断する際には、通行車両の死角をも考慮して横断する注意義務が存することを前提とするものである。しかし、引用した原判決も説示するように、こうした歩行者の注意義務を根拠づける法令等の根拠はなく、かえって、道路交通法38条1項により、通過車両の方に横断を妨げてはならない義務を課しているのである。したがって、横断歩行者の確認等の義務を前提とする控訴人らの上記主張はこの点ですでに当を得ないし、控訴人が横断歩行者であった被害者の存在にまったく気づかないまま左折進行するなどした本件事故の態様にかんがみても、到底採用できない。』 と明確です(大阪高裁平成16年7月14日言渡し判決)