地殻変動判決
東名高速2女児死亡事故訴訟判決の画期的意味
平成15年7月26日
 

一昨年に、死亡逸失利益の中間利息控除非5%判決が8件も相次いで出たとき、【民事裁判の革命】として、メッセージとしてトピックに載せました。昭和40年代までに固定された裁判所の画一的処理に風穴があいた、と思われたからです。 しかし、最高裁が保守的結論を出してからは、幻のような判例となってしまい、その後非5%判決は出なくなりました。
その後の民事訴訟において、遺族や被害者支援者は民事訴訟の厚い保守的な壁に虚無感さえ感じられました。

ところが、昨日の平成15年7月24日の東京地裁の井上夫妻を原告とする交通事故訴訟判決は、地殻変動を伴なうようなショックを、交通民事法廷に与えたはずです。非常に画期的であり、ある意味で正面から被害者の声が通じた判決と評価される判決であると共に、実務に与える影響は計り知れません。

何が実務に影響を与えるのか?

まず、逸失利益についてですが、死亡損害金のうち逸失利益は分割支払OKとした点です。
判決は私的自治の原則から、原告は訴訟請求を自分で選択できるという処分権主義に基づくと明言しております。被害者遺族にプラスとなる判決です。
これまで被害者原告は泣く泣く、5%もの中間利息を控除をされた圧縮額を受け取らざるを得なかったのです。一括払いが前提でありました。このため、5%もの中間利息控除率は不当であるという中間利息控除論が被害者より再三議論されましたが、結局裁判所は【画一的処理の要請】を根拠に5%控除率の厚い壁は崩れませんでした。
ところが、裁判所は今回、被害者の定める分割払いでもOKとしました。今までもかかる訴訟はなかったわけでは有りませんが、一括支払の判決となってましたので、画期的です。つまり分割払いは、中間利息控除なしですから、被害者遺族にこれ以上プラスなことはありません。

今受け取るなら、安くなるのですから受け取りたくない、分割なら控除されないなら分割で支払をして欲しい、との理屈が通ることとなったのです。支払先も損保ですから、支払は万全でなくともとりあえずは会社が倒産しない限り、支払義務を負うのです。高い分割金を支払え、といえるわけです。

次に慰謝料は、もっと画期的でした。昭和40年代で固まってしまった慰謝料固定相場の典型であった3千万円確定上限という交通裁判の最も厚い壁を崩したのです。裁判所が金科玉条とする法理【全国的画一的処理の要請】のシンボルであった、(3千万円絶対上限)を裁判官が突破したのですから痛快この上ない判決です。3400万円は地殻変動的金額と言っていいのです。慰謝料3400万円という上限枠突破の意味は、昭和40年代〜今日までの裁判所のご都合法理である【画一的処理の要請】見事にくつがえした名判決だといえます。
どんな悪質な事故でも【慰謝料3千万円や】というような横柄な裁判官も肩身が狭くなりますね。

河邊裁判官は、他にも最近論文で【不起訴事故事件の検察庁への捜査記録開示=裁判所の積極的送付嘱託命令】を指摘されている裁判官であります。その理由も【検察が記録を出さない為、長時間の労力を司法や被害者原告に与えており、司法不信に至っている】との痛快な理由を挙げておられる裁判官であります。
井上さん風に言うと【いい判決を書いたおじちゃん】です。河邊裁判官、アンタはえらい。
なお、この論文は時間をかけた緻密分析はしておりませんので、了解ください。