なぜ、交通事故が軽く扱われるのか(3)
原因 その6
平成15年6月10日
 

捜査情報非開示問題

被害者の立場
交通事故が軽く扱われる根本的問題は、捜査段階の捜査情報開示がされないことです。一般犯罪でも捜査情報が開示されませんが、交通事故特有の原因として取り上げました。公道で発生した、過失の事故なのに、事故原因についてどんな調書作りや捜査をしているか、被害者に知らせてもらえません。過失犯でも、殺人等の故意犯罪と同じ扱いとされ、被害者は捜査情報を教えてもらえない結果、捜査の監視もできません。被害者の監視がないので、被害者に責任を押し付けていい調書や、捜査となります。交通事故では、交通警察や交通検察のモラル低下で、ドライバーは処罰しないとされ、捜査の監視もされないため、警察や検察は平気で手抜きをし、交通事故を軽く扱う原因となるのです。
被害者に監視されていないので、加害者は言い放題、警察も初動捜査で済ませてしまい、目撃者捜しなどしない、ひどい場合には初動捜査の実況見分に沿う調書作成をしてしまいます。副検事は不起訴容認の犯人であるので、せいぜい罰金で持っていきたいので、調書作成も甘く、警察調書を簡単にし、或は加害者寄りとしてしまうのです。
遺族の立場だけでいうと、即時の捜査情報が必要な理由は次のとおりです。
死亡事故が発生して遺族が一番知りたい事は亡くなった家族の最後の事実ですが、法的にも重要です。民事上では過失相殺の比率に直接影響するばかりか、刑事上も加害者の処分について遺族が制裁を求める権利があります。この点捜査段階で警察・検察が一切遺族側に知らせない事に致命的欠陥があります。ある意味で警察・検察の捜査権限は遺族から委託を受けているという関係にあります。労災事故や医療事故では、遺族側が証拠保全をすることができ、警察が入るのはほとんど例外です。ところが交通事故は遺族が入ることは一切できない。警察が捜査権限を独占しているからです。遺族側の証拠保全を排除しています。遺族としては知りたいことを知ることが全くできない。遺族が目撃者を見つけても、警察がどういう捜査をしているか一切知らされない。遺族としては第二の目撃者、第三の目撃者も捜すが、警察がどのような調書を作るかについては一切監視できないし結果も報告されない。こういった病理的なシステムが現実に存在している。情報公開の今の社会の流れのなかで、交通事故の死亡事故に関しては非常に密室で捜査が行われ、被害者や遺族を排除しているシステムに致命的欠陥があるのです。

法務省の立場
法務省は、捜査情報が開示されない根拠を刑事訴訟法47条とします。
『訴訟に関する書類は公判開廷前には、これを公にしてはならない。但し公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。』 
法務省の根拠検討
しかし、これは交通犯罪に通用する根拠でしょうか。非常に問題があります。
問題点を8つ程、指摘しますと、キーワードでいうと、政策矛盾、当事者の不公平、捜査情報垂れ流し、捜査独占の弊害、非開示による権益、心のケア、秘密検察、検察一部は開示OK、です。

(1)【政策矛盾】
起訴不起訴面で、法務省は『交通事故は犯罪でない』としております。しかし、情報開示面では『交通事故も犯罪』だから開示しないと、するのはあまりに勝手過ぎます。
犯罪情報は一般に捜査段階で知らされないのが、当たり前ですが、既に述べましたように、交通事故は犯罪でないとされ、非犯罪化要請もあり、『事故』として事務的に処理されています。ところが、情報開示の面では、そうでなく犯罪扱いをする。これはおかしい。国の政策が矛盾しています。起訴面では、非犯罪化扱いしながら、実は捜査開示面では犯罪扱いをする、との矛盾です。(また、一般犯罪は故意犯がほとんどです。交通事故は過失です。過失の捜査も故意犯罪とまったく同じ扱いとすること自体がおかしいのです。)

なお、リスク対策を放置する政治も問題です。
国は交通事故を既に犯罪扱いをしなくなったことによる被害者の不利益対策について、何ら対策や措置をしてません。
かつての7割起訴率は、今や1割起訴です。非犯罪化することで、発生した被害者側のリスク対策は何ら講じていません。政策転換による措置をしていないという致命的欠陥があります。具体的には、かつて起訴された事件が、不起訴となるわけですから、調書等が閲覧謄写出来ず、被害者の権利実現に支障が生じてしまう事もあるし、また不起訴となることで、被害者の過失があったという推定が働くのは当然です。
つまり民事問題として、被害者側は構造的に不利益となったのは明らかですから、リスク対策をするのが政府の役目のはずですが、これをしていない。
官僚の手抜きのみ認め、それに伴なう措置は一切していない。大体、9割を不起訴にし、無罪扱いとするなどは、無策です。

(2)【捜査段階の当事者の不公平】
捜査中の捜査情報は一切開示されず、圧倒的不利益を被害者に押付けています。賠償問題は、事故直後から発生し、損保側は過失割合何対何、と言ってきます。既に事故直後から遺族は民事的問題に直面するのに、国は制裁終了後にしか事故情報を一切開示しませんから、被害者としては現実的にも困ります。事故直後の混乱以外にも、情報が与えられない取引に巻き込まれるのです。
ところが、加害者は捜査を受ける立場ですから、捜査情報を知りうる機会が無数にある。損保側も加害者を通じ、情報を知っています。詳しい情報探知組織として、損保リサーチなる探偵調査会社が、損保の下請け会社としてあります。損保リサーチは元検事、元警察官を雇用し、平気で警察の情報を取っているのです。遺族だけが知らされないという現実があります。知らされない状況で、知らないうちに加害者が会いたいと突然言ってきます。対応に戸惑うのが当然です。加害者は捜査情報を知っているので動くとなります。当然に何が不利益で、何が問題か、よくわかってます。目撃者にさえ会えるのが加害者の立場です。
他方被害者側遺族は何にも知らされない状況で、加害者の接触等に対して、武器も無く応じざるをえません。刑事面で刑を軽くする全力の戦いが加害者にあります。民事面でも損保が支払を軽くしようと、事故態様のこと、加害者の過失程度について、当然に加害者に入れ知恵をする。『すぐに葬儀に行け』と。加害者の多数が、誠意の気持すらないまま参列し、後で香典だけあった、となります。加害者は被害者に会っただけでも、『遺族に会った』と刑を軽くする材料とします。被害者側はそんな利用をされるとは思いもしません。事故発生直後から過失割合は民事的に重要なのですが、情報にアクセスできるのは、加害者のみなのです。
刑事的に制裁を求める権利行使が出来ず、民事的にも不利益な交渉をなし、初めから過失割合を決めた交渉を強いられる。ところが被害者側は事故情報はまったく知らない、そんな交渉が対等な交渉であるはずがありません。
事故で発生する問題は犯罪面もありますが、すぐに保険金支払の有無や、巨額の保険金支払の交渉が開始されるのです。市民のビジネス交渉に関して、何ら情報を与えず、不利益交渉を強いるというのは、あまりにも不当な民事交渉を放置しすぎていませんか、という問題があります。

(3)捜査査情報の垂れ流しと権益
捜査情報の損保への垂れ流しを証明する資料が私の手元にあります。実況見分の2日後に、衝突地点や気付いた地点など事故の詳細な数字の情報がそのまま記載された書類です。損保会社下請けの損保リサーチの報告書です。警察は、いとも簡単に事故情報を損保調査会社には流しています。警察内に入ることだけでなく、交通部の警察官の会って話しをし、絶対に被害者には漏れることない実況見分調書をそのまま謄写して交付しています。誰がという関係でなされているのではありません。署内の雰囲気でそうなっているのです。というのは、損保リサーチ等は警察官のOBや検事OBが就職している関係があるからです。拒否できるわけがありません。交通事故を軽く扱うから、捜査情報垂れ流しとなります。
(権益= 損保下請け会社と警察官及び検事)
捜査情報の損保調査会社への垂れ流しは、捜査官僚の利権構造と、官僚の利権集団を生み出しています。この場合の利権は、就職だけでなく、OBの立場利用や、検事が職務の
不正を告発されにくいという職務上のいろいろな利権があるのです。開示しないからいいという問題だけでなく、開示しない為に積極的な弊害を生み、捜査官の権益の巣となっている疑いがあります。
1) 退職後の損保リサーチなる損害調査会社の顧問には検事OBが多い。警察OBも多いから警察から情報を入手しやすい。
2) 損保調査会社が介入するため、加害者だけでない情報のインプットが警察の捜査に入る。加害者側としてできます。だから、事故態様や目撃者など本当かどうか極めて疑わしい。
3) 被害者が知りえず、また検察も検証しないため、事件を警察官が揉み消しやすいし、ねつ造しやすい、となります。これも利権?権益?  

(4)【警察の捜査独占】
 主任警察捜査官による捜査
警察官の捜査は、今のシステムでは、捜査の主導を決定し、副検事の指示を仰ぎません。交通捜査は今『主任捜査官が決定する時代』(元検事の弁護士の話)。被疑者と目撃者の話から事故態様を決定します。即ち、交通捜査官の仕事は、実は裁判官と同じ仕事をしています。ところが、誰からも監視されず、検証もされません。警察の捜査が信用できるわけもありません。

警察の捜査独占
また、法律的にも重要ですが、警察は事故の捜査を完全に独占してます。たとえば、他にも事故は、医療事故、労災事故などありますが、交通事故だけは警察がすぐに証拠保全して、調べる。どんな傷害事件でも通報しなければならない法律もあるため、捜査独占です。ある意味では警察が遺族から依託を受けて調査する関係にあるのです。にもかかわらず、何時までも捜査結果を教えない。これはおかしい。遺族が目撃者を教えてくれ、と頼んでも絶対に教えません。目撃者の実況見分や供述調書作成されても、絶対に教えません。警察が目撃者への接触さえ教えてくれません。捜査中ということが表向きの理由です。しかし、被害者の方はすでに戦いが始まっています。民事上の交渉がすぐやってきますし、また刑事制裁を求める行動も始まっているのです。こういうのが出来ないということです。手足がもがれているという状態なのです。

独自の警察文化
そのうえ、警察の組織文化として、捜査に過ちがあっても絶対に認めない、との無謬主義という独自の日本の警察文化がありますから、捜査が開示されない事を利用して、独断と偏見の捜査がまかり通ります。
交通事故捜査で、警察庁の役人が『検察は交通事故捜査から撤退した』と言うように、検察が検証をしない捜査ですから、遺族に検証させろとなります。捜査開示が基本のはず。検証しないので警察やりたい放題となるのです。
誰からも、監視されず、検証もされない。今の交通事故捜査の実態です。

(5)【遺族の心のケアに、情報開示は不可欠】
捜査記録を開示しないことがどうして問題かは、法律以外にもあります。
私は弁護士という立場で、事故直後遺族から相談を受けます。捜査という問題だけでなく、自分を責める母親の姿や父親の姿もあります。朝元気だった子がいきなり死亡した、と知らされても、現実とは思えない。夢のような状態がしばらく続いてます。混乱しているのが当たり前。この混乱から救うことが今の日本での被害者救済のあり方のはずです。ところが、捜査情報がほとんど開示されない為、自分の子供の最後の行動や最後の姿がわからない、真実はどうだったか、という深い悩みが毎日続きます。情報が与えられないから、余計に悩みが巡回し、精神的に追い詰められていく母親の姿もあります。事故原因を独自に探してみたりもされます。こういうことは本当は警察の仕事ですが、警察や検察が情報を開示しない為、精神的混乱もあり、独自に捜さざるを得ません。心のケアという面からも、捜査情報開示は早急にやるべきなのです。基本的な暖かい行政の視点がまったくありません。 
国は知らない振りをしてますが、実は被害者側の混乱の中には、加害者側の刑の減刑のためのアプローチや、損保からの情報を知らされないままのアプローチもあったりで、大変だということを認識してもらいたいものです。
混乱の極致にあるのです。この立場や心を救済するのが行政の役目でもあるはずです。

(6)【刑事制裁処理後の開示もしないのは、野蛮国家? 秘密検察?】
刑事裁判終了後も情報隠蔽
起訴不起訴が決定し、処分が終了しても、開示しない情報すらあります。
これは意外に知られていません。被害者の写真とか納得できますが、目撃者の住所が消されているのです。意味は重大です。               
問題点は、捜査中だけでなく、捜査が終わり、処分が終わってもなお核心的捜査の点は、絶対に教えないということです。目撃者の住所を教えないようにしているのです。公判終了した事件について目撃者の住所は付箋をつけられ、捜査情報の開示では、消されているのです。謄写をしても、目撃者には確かめようがない。目撃者の話を確かめようとすれば、そのため裁判をして、裁判長の許可を得て、検察庁に調査嘱託をすべきとなります。国が悪質な公判事例でも、被害者の民事上の権利救済の道を閉ざしているのです。秘密検察や秘密警察のやり方です。後で間違いないかどうか、確かめる権利は当然被害者にあるはずです。それが永久に出来ないようにしている。これは一体何なんだ、と私は思います。目撃者探しをさせないということです。捜査絶対とする体質が日本の検察や警察の姿勢ということです。捜査に文句を言わせない、ということです。もっともプライバシー保護と検察はいいますが、公道で発生した、しかも公判となるような事故の目撃に関して『プライバシー保護』でごまかされる問題ではありません。捜査絶対の価値観を押付けたいからです。捜査に誤りはない、との独断的な無謬主義がはびこっています。明治時代の官僚絶対、官憲絶対の思想が残っているのです。

被害者排除システム
なぜ、刑事裁判になった悪質事件でも、検察は目撃者の住所や氏名を永久に隠し続けるのでしょうか?公判起訴になった事件や罰金で終わった事件については、遺族は捜査記録を後に閲覧謄写して、謄写記録に基づき民事裁判をします。ところが依頼者遺族は『目撃者を捜して話を聞きたい』とか、『目撃者の話は少しおかしい。会って目撃者に確認したい』となることが多い。というのは、事故のことについての言い分次第で、被害者に過失ありとされ、過失相殺により、損害額が1割〜4割削除されるのですから、重大事です。
それで、裁判前に、すぐ実行しようとすれば出来ない仕組みです。『捜査記録は刑事処分後開示している』というのが法務省の言い分ですが、実は内容は開示されても、肝心の目撃者の住所が記載されておりません。ひどい場合は、氏名さえ消されている。謄写の時に付箋をつけるからです。目撃者の住所等教えてくれません。ですから,遺族が過失相殺で争う事件について、目撃者の話を確認してから裁判をと考えてもそれは実行できません。もし、どうしても目撃者の話を信用できないとすれば、裁判をして、その上目撃者を証人尋問で呼び出し、法廷で聞くしかないのです。しかし直接証人尋問すら出来ません。なぜかと言うと、目撃者の住所を開示してないからです。このため、裁判をして、裁判の中で検察庁に対する記録の調査命令を裁判所に出してもらわねばなりません。この段階で、裁判官の中には『必要でしょうか?』と注文をつけ、遺族の権利行使を妨げることすらあります。要するに、捜査は正しいとする、警察と検察のおごりがあります。裁判が終了したら、被害者は当事者ですから見せてもいいじゃないか、とおもいますが、被害者が捜査の検証をすることを、極度に恐れているのです。被害者のいないところで、捜査をしているからいろいろ都合の悪い事をしていると思われるから、国も見せないと思いますね。そうしか思えません。
目撃者が本当に正しいか、どうかは遺族からすれば、非常に大事なことです。これを知る手段が事実上遺族には、まったくなく、目撃者調書内容を信じろ、ということとなります。しかし警察は被疑者や目撃者のいうことを疑って聞く態度にありません。
不起訴事件
しかも不起訴事件は実況見分調書しか開示せず、他の資料は開示されていません。不起訴事件について民事上争っても遺族の戦う資料はほとんどないのが実情です。

(7)捜査情報非開示がどうして今まで問題とならなかったのか? 
システム側の損保代理人が被害者側の代理人となっているのが日本の交通事故の受け皿システムです。損保弁護士は、今まで事故態様を争うことをしてきていない。損保弁護士の仕事の仕方は、捜査書類を争うなどせず、損保担当者からの情報のみで動く癖があるので、被害者側で受けても、そのくせは治らない。しかし、最近では事故態様が警察の調書等と異なるのではないか、との遺族が増えており、問題が顕在化してきてきた。どうして捜査を開示しないのか、そうすれば、遺族の方で調べることもないし、署名等もする必要もない、という問題が生じてきているのです。捜査段階での目撃者を捜したのに、目撃者が結局採用されず、不起訴となった事案も出てきてます。

(8)検察上層部に開示意見もあり?
検察内部でも、『交通事故だけは捜査情報開示してもいい』という内部意見も有ると聞きます(産経新聞 検察の疲労)から、交通犯罪での捜査情報開示については、政策の合理性の問題も絡めると実現できないわけではありません。 問題は規制による権益や官僚利権です。これが一番問題。