奈良副検事交替事件 その(2)
捜査情報非開示制の利用犯罪に等しく、被害者保護立法の効果があった全国初事例
平成15年5月2日
 

相談メールのやりとり
この事件の遺族とのメールのやりとりは平成14年4月から110回を超えました。捜査段階からの本格的な相談でした。
事件は相談段階から捜査の不信に向けられ、目撃者の不信に向けられていたのです。
その中に、副検事との面会の詳細な数度の報告もあり、再捜査をしてくれると報告もありました。後半50回ほどのメールはその連絡でした。事故の状況については、肝心の記録を見れませんでしたが、警察から聞いておられました。
刑事公判になって、期日も短いことがわかりましたが、とりあえず公判決定は祝杯をあげられたそうです。
しかし問題は公判になってからでした。記録の謄写を頼んでも、すぐにはできず、書記官や裁判官は次回意見陳述というだけで、記録を早く読めと、せかされているようにも感じました。そういう中でようやく公判期日2回目前に記録の謄写が出来、公判3回目が意見陳述となりました。記録を読んでから意見陳述したい、と申し出たからです。
 ところが、記録を読んでびっくりです。副検事が遺族を裏切るような捜査をしていたのです。メールでの相談を私と1年近くしていましたから、副検事が面会してくれる、再捜査をしてくれると、好感を副検事に抱いていたのです。どちらかというともともと人当たりの良い人格者の遺族でした。ところが、調書を読んでびっくり。先生、ひどいですよ。この副検事は。という電話がすぐに入りました。裏切るような捜査とは、どういうことか?

裏切りの検察の捜査顛末
被疑者の当初の供述は次のとおりでした。
『警察の員面調書供述
(1)地点で減速しながら、右折するため、右の指示器を出し、走行した。
交差点手前に一時停止の標識があるので、私はブレーキをかけながら、走行した。停止線のところでほとんど止まるような速度で走行し、左方を見ながら、交差点に進入し、ゆっくりした速度で右方を見ながら、交差点に進入し、左方を再度見て、右方を見ようとした時に、右方からプーという警笛の音が聞こえ、右方を見ますと、バイクが目に入り、
(2)地点付近でブレーキペダルから足を離して、右折する為、ハンドルを右にきりながら走行しまして、右から来たバイクと衝突したのです。』

ところが、検察の調書は時間も相当経過しているのに、内容が全然違ったものでした。
『検察の調書供述
(1)で減速しながら右折の合図を出しました。
(2)で一時停止をしました。そこで左右道路を見ると、右から来るバイクを認めたので、慌ててブレーキを踏みましたが、衝突しました。』

本件事件の問題点は、今の交通事故システムの問題点を集約しています。

  1. 検事が平気で調書の変更をするということを示しています。被疑者の供述に沿うように調書の改ざんを平気でしていることです。 警察では右折は徐行とした扱いを一時停止したとしている点が1点、検察調書では、右方確認注意義務の確認を尽くしたとなっているのに、警察では、被害者の警笛で気付いた、となっている点の2点が異なる。これはどういうことを意味するのか、といえば、警察では右方確認も、一時停止もしていないのに、なぜか、検察では右方確認も一時停止もした、とされているのである。めちゃくちゃです。
  2. 捜査情報非開示の制度の中で、不起訴を当たり前としてきている検察は、ここまで腐っているということを示しているのです。起訴率低下主義と捜査情報非開示制とが結びつく時には、被害者から見ると明らかに副検事のしたことは、虚偽公文書作成罪です。
  3. 被害者保護立法が今回の不祥事発見のきっかけ
    かかる検事の仕事の手抜きを告発できたのは、被害者保護のために刑事訴訟法が改正され、被害者や遺族が意見陳述と捜査情報の記録謄写ができるようになったためです。検事調書と警察の調書とを比較したときに、検察の手抜きにより、被疑者の供述の変遷がそのまま記載されている。警察の調書があるのですから、初期言い分となるはずです。
    ところが半年経って、副検事は被疑者の供述の変遷をそのまま記載しているのです。これは検事の仕事ではない。弁護人の仕事。検事失格です。
    もし刑事訴訟法の被害者保護の改正がなければ、被疑者の調書の比較検討などできず、遺族は記録の検討すらできずに、公判は2回ほどで終了し、被疑者の供述の変遷を認めたままで終わっているのです。
    刑事訴訟法の被害者保護立法がなければ、今回のような事件は起こっていません。
    刑事訴訟法の捜査記録の閲覧謄写が出来たからこそ、今回の副検事の不祥事がわかったのです。そういう意味では、被害者の捜査記録の公判段階での謄写が、目に見えるような形で現われた全国初の事例かもしれません。
  4. もし、捜査情報の開示が捜査段階でなされたならば、今回の事件は多発するでしょう。
    警察段階での初動捜査での調書の違法性が問われる事件が多発するでしょう。
     潜在的には、このような調書の変遷事件、捏造事件は多数あるということです。奈良の事件は氷山の一角です。捜査情報非開示政策は、警察や検察の違法調書作成を多数生んでいるのです。