署名活動 平成15年4月12日
 

1 署名のアレルギー 
 遺族のなかには、署名活動をすることへのアレルギーを持つ方が意外に多いようです。
特に、最近の新しい事故の遺族と古い事故の遺族との間には、署名についてのイメージがまったく違い、自分の時はこうだった、とする古いメンバーの認識とに、すこしですが、ずれがあるように感じます。最近の事故の遺族が多い命のメッセ展でのメンバーが、署名活動をよくされていることの、意味を考えてみたいと思います。

2 刑事裁判のための署名
 私も、署名に付いては、政治活動のような意味と勝手に考え、それほど関心もありませんでした。平成11年に岸和田で学校帰りの小学校1年生女子が青信号で横断している時に、向かいから右折してきた車に轢かれ、死亡するという事件を担当しました。女児には上級生のお兄ちゃんが付いていましたが、一瞬の事故でした。検事への面会を求め、すぐに現場を見て欲しいとか、轢き逃げに近いのではないか、と言う申し入れをしました。
と同時に、許せない感情を形にしようということで、遺族と協議して、署名活動をすることとなりました。岸和田支部裁判官宛でした。署名は、学校関係者や地域の関心を集め、相当数(414名)集まりました。被告人弁護人の同意が得られたので、検察官を通じ、多くの署名が証拠として裁判所に提出されました。制裁のための署名は、通常の刑事裁判では被告人がすることはあっても、被害者側から出されることは有りませんでしたから、効果はてきめんだったようです。

3 裁判への影響
 署名は裁判にも明らかに影響し、母親と父親の証人尋問を各1回行なった後の被告人尋問終了後にも、母親の証人尋問をするという丁寧な審理となりました。遺族だけで合計3回となりました。意見陳述が認められてない時でしたから、母親を2回も証人尋問をするというのは、極めて異例な審理となったのです。署名をしてくれたのは、地域や学校関係者だったので、事故現場の改良等のことに話題が集まり、行政の対応にも発展し、現場は見違えるような安全通学路運動を呼ぶこととなりました。
 多数の署名は裁判の審理のうえで、大変なことだ、との効果を裁判官や検察官に確実に与えたようです。裁判官も検事も監視されているような効果を生んだのです。被害者排除システムの中で、署名活動は、明らかにインパクトをシステム側に与えることとなりました。
この時以降、私も署名活動については、積極的にするようアドバイスするようになりました。つい先日も博多の小学生の死亡事故では、街頭活動をしないで3万人を超える署名が集まりました。捜査検事と公判検事の各2名の検事交替まで求めた特徴のある事件でしたが、署名の数は力となり、検事2人の交替を求める原動力となりましたし、検察トップも強い関心を持っていたようで、被告人控訴に対し、検察も控訴する検察としては珍しい控訴の図式となるという被害者遺族重視の裁判ともなったほどです。被害者排除システムを裏返した事件です。       
大阪の死亡事故でも父親が死亡被害者となった事件で、娘さんが集めたのは、3ヶ月で1万人となりました。アドバイスをした私もびっくりするほど集まりました。被害者の制裁を求める感情への世間の見る眼は、意外にも温かいものがありました。公判起訴を求めた署名の結果は、公判起訴の結論となり、一審では実刑判決となりました。高知でも、飲酒等の典型悪質事故でない事故で、数千名の署名の影響があり、2年2ヶ月の実刑の報告を受けた事件が先日ありました。

4 地域や交通行政への影響
 署名の影響は刑事事件だけに納まらないこととなり、事故交差点の構造的問題も地域で変えようとの運動となり、信号の改造、橋の改造となり、『めーちゃんの橋』という毎日新聞の記事連載となり、小学生の通学路を改めて考えようという一つの運動のきっかけになりました。
警察や検察は『交通事故を軽く』見ておりますが、交通死亡事故の衝撃については、世間はそうではありません。監視されてないところで、勝手な捜査をするのが警察や検察ですが、署名を持参すれば、態度が違ってきます。監視されているというプレッシャーを与えるのです。監視されないところで、簡単に済ませ、交通事故を軽く扱おうとする警察や検察に対する遺族の有効な対策が署名活動であります。
署名活動に対する地域の関心や、交通事故撲滅に対する関心は、予想以上のものです。署名の意味を積極的に評価しなければならない時期にきています。

5 立法等へと連なる署名運動
 東名高速2女児死亡事故遺族らの厳罰化を求められた運動も、署名が実を結んだものです。署名活動は、被害者排除システムの日本では、1番有効な被害者支援かもしれません。 個々の裁判の署名運動が綿々と続き、やがて捜査情報開示制度等の立法改正作業等に結びつくことも期待できます。神奈川の遺族の人たちも、捜査段階での捜査情報開示制度の立法実現に向けた署名活動をしたい、という意向を聞きました。いろいろな署名活動が遺族の間でなされていることについては、できるだけ支援活動に組み入れていくべきだと思います。監視されないシステム側へのもっとも有効な反撃手段だからです。

6 最近相談うけたケースは、署名を勧めると、2ヶ月で3万5千名の署名をされました。
 これは、びっくり。被害者遺族の怒りのエネルギーはすさまじい。