重度後遺症裁判のために(8)
損害賠償と福祉利用の関係 ―桑山さん語る―
平成14年10月18日
 

 損害賠償訴訟を闘われた実績のある【立ち上がる家族代表桑山氏のメッセ−ジ】を紹介します。重度後遺症被害者の問題は深く大きく、司法が見向きもしない問題があります。被害者支援問題は、被害者や家族が声をあげないと、変わらない部分がありますので、桑山さんの声をあえて載せ、司法や裁判の世界に一石を投じてもらいます。

●質問●
【交通事故の支援団体の情報に因れば民事裁判が終わるまで福祉の介護ヘルパーサービスを利用してはいけない。福祉のヘルパーを利用してしまうと民事裁判で職業介護人の費用や自賠責の1級の介護料が請求できなくなると言われましたが、本当でしょうか?】

●回 答●
重度後遺症若者と家族の会代表《桑山さん》のアドバイス
「若者と家族の会」の桑山と言います。私の知り得る範囲でお答えします。
 交通事故による被害者の福祉についてですが、加害者の責任と社会福祉の制度は別物です。加害者側の損保の弁護士などは「社会福祉で救済を受けているならばその分については賠償額から差し引くべきである」という主張を行いますが、それは全く論理的に整合性がありません。加害をした者が賠償するのは当然のことです。私の息子は1級の障害者となりましたが、民事裁判の提訴前に既に障害者手帳を取得し、ヘルパーの派遣も受けていましたが、そのことにより賠償額が削られたことはないと思います。
 福祉制度は障害者の支援について行われるものであり、障害者となったことの原因は問いません。しかし、障害者福祉の制度はその時々の経済・政治情勢によりどんどん変わっていきます。来年度から障害者福祉に施行される支援費制度に見られるように、どんどん福祉の制度は変わっていきます。
 交通事故による被害については、本来加害者が賠償すべきものです。その辺りの事情を混ぜこぜにさせないようにしなければいけません。
 どの支援者団体からお聞きになったかわかりませんが、自動車事故対策センターからの介護料をもらっているから、その分を削ることは判例ではありません。介護料は自賠責保険の運用益による「贈与の理念」に基づくからです。また福祉を利用してはいけない、とも聞いたことはありません。
 賠償と福祉は別物であることを裁判で何度も主張しなければいけません。損保会社が「福祉に寄りかかる」ような主張は、支払いを渋るために行う常套手段の一つです。因果関係の観点からも福祉の利用とは別物であることを、裁判所に理解させねばなりません。

なお、この機会に言いたいことがあります。

1)自賠責と労災
自賠責に優先するものの一つに、私の知る範囲では労災制度があります。
勤務中に自動車事故に遭い、受傷した場合ですがこの場合、労災をとるか自賠責をとるかは、被害者の意向による、とされています。ただし、厚生労働省は自賠責を優先させろ、と言っているようです。労災と自賠責のダブルの補償は許さない、ということらしいですが、色々議論があるようです。交通法学会でも議論になっています。

2)介護保険
福祉面では介護保険です。介護保険は65歳以上の障害者に「強制的に適用される」「福祉」制度ですが、自動車事故対策センターの介護料は65歳になれば打ちきりになります。介護保険で「救済」される場合に事故対からの介護料は不必要という「論理」らしいのですがかなり矛盾があります。重度障害者に対する介護保険の不十分さは明らかなので、 もう少し論議を整理して、当事者団体として不服申立てをしても良いように思います。

3)以下は感想で、今後多くのところで発言しようと思いますが・・
 私の基本的に不思議だと思うことの最たるものは、任意保険に加入していないクルマにはねられた被害者が自賠責しか補償がない、というのはどうしても納得がいきません。弁護士さんも「金のない相手からはとれない」と被害者を「説得」するケースが多いのですが良くわかりません。そんなクルマを走らせることを許可する行政の責任、保険料が高くなるとクルマが売れにくくなる、という自動車製造・販売会社の責任、やたらと高い保険料をふっかけるものの支払いは渋る損保会社の責任、いろいろありますが、弁護士業を営む方が、被害者に「泣き寝入り」を勧めざるを得ない、という社会的不正義は何とかならないものでしょうか?