重度後遺症裁判のために(5)
高次脳機能障害(2)
平成14年6月1日
 

1 高次脳機能障害がなぜ問題となるのか?
 高次脳機能障害とは、事故によって意識障害があったもののその回復過程において生じる被害者の認知障害と人格変成により、最終的には社会復帰が困難となる障害が残存する障害をいい、自賠責の等級認定で直接問題となってます。
 自賠責等級表はそもそもは労災基準表であり、改訂されてないので、見逃されやすく、被害者は置き去りにされて来ました。脳外科の診察も脳のCTやMRIでの機械判定至上主義であるために、どうしても人格障害、情緒障害については診断も消極的とならざるを得ない医療現場の実情がありました。特にびまん性軸策損傷被害者に特有で、大脳皮質の表面損傷が目立たず、時として見逃しやすいとされてきたのです。表面損傷があれば、記名力低下等の因果関係ありとされやすいので、損傷がなければ逆に因果関係を認められなかったのです。 マスコミや脳外科学会により、注目を集めだしたのです。政府は自賠責制度認定の改善に取り組む意向を示しています。

2 典型症例 
(1)日常生活 認知障害― 記憶、集中力 判断力 病意識 などに欠如や低下が見られる事
人格変化― 感情易変(簡単に変わる)不機嫌 攻撃性 暴言 暴力 幼稚 羞恥心低下 多弁饒舌 自発性や活動の低下 病的嫉妬 妄想などがあるといわれています。

(2)法的要件
第1に交通外傷による脳の外傷があることが必要で、画像所見で、微細のものでも脳萎縮や脳室拡大が認められることが必要です。
第2に一定期間の意識不明状態が継続している事が必要です。脳外科でも意識状態検査が脳機能推定の重要な基準とされ、JCSやGCSといわれる検査があります。これらの検査の点数結果が6時間以上継続すると、その予後は悪いといわれます。JCSでは100以上でGCSでは8点以下とされています。
第3に具体的に診断書に頭部外傷後遺症、びまん性脳挫傷、脳挫傷後遺症などが診断書に記載されている事が必要です。
第4に、事故前の意識回復の程度に顕著な差が見られるかどうか、このために知能検査が行われたことが必要です。
第5に診断書やCT、MRI等や所見の日付に従ったら、どうなっているかも重要です。

3 実践的戦い方について
 現実には自賠責認定で決定されます。ですから自賠責請求をするときには必ず、高次脳機能障害であるとの指摘はもちろん、上記の点でどのような障害があり、かつ医学的に見たらどう評価すべきかどうか意見を言うことが、必要です。これは程度認定が出た場合に異議申し立てをする場合もそうです。
 特に医師でなくとも家族が勉強されている場合も多く、また日常生活を良く知っているのが家族ですから、ある意味では専門家的意見となりうるのです。

4 等級認定の目安
  後遺障害等級表と 高次脳機能障害への当てはめ

1級
『神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要する』
  身体機能は残存しているが、高度の痴呆があるために生活維持に必要な身の回り動作に全面介護を要する
2級
『神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要する』
  著しい判断力の低下や情動の不安定があり、1人では外出する事が出来ず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことが出来ても、生命維持に必要な身辺動作に家族からの声掛けや監視を欠かすことが出来ない程度
3級
『神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができない』
  自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶や注意力、あたらしいことを学習する能力、障害の自己認識 、円滑な対人関係維持脳力などに著しい障害があって、一般就労がまったくできないか、困難とされる程度
5級
『神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服する事ができないもの』
  単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。但し新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため、一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、終了の維持には職場の理解と援助を欠かす事ができない程度
7級
『神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外に服することができないもの』
  一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行う事ができない程度
9級
『神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの』
一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業の効率や作業維持力などに問題ある