重度後遺症裁判のために(3) 平成14年2月26日
 

●質 問●
 「家族は警察の捜査に対応したら良いのでしょうか?」
1) 事故が起こってから、警察は捜査に着手します。被害者側の状況を調べる為に、病院等に来て事情聴取をしたり、家族が警察に呼ばれて家族調書作成に臨まねばなりません。警察に対してはどう対応したらよいのでしょうか?
読者のメール等の1部を紹介し、説明します。

体験談(1)
『警察の方は、事故の状況を聞きに入院先病院に来て、娘に「軽い刑で良いですね?」と誘導尋問の様に言いました。私はすぐ警察の方に廊下に出ていただき、「娘はまだ自分が一生歩けないんだと知らないんです、それを知った時に、相手を許せないかも知れないでしょう」といったのですが、次に警官が娘に言ったことは「それ相当の罰で良いですね」でした。私達はそれが刑事罰に関係するという事など、その時は全然知りませんでした。
今悔やまれるのはその時、「絶対に許せない、重い罰にして下さい」と言えば良かったと、後悔しています。』と

体験談(2)
高校生の御長男が自転車で国道を走行中に、後ろから速度25キロオーバーのトラックに轢かれた直後、病院のICUで待機状態となって以降介護生活を5年以上されている方です。
『警察では加害者は若いし、とか思いやる気持ちもありました。それはまだそのときは加害者も病院にも顔を出していたときでしたから。それどころではない気持ちでした。処罰とか、思う気持ちはあっても眼の前の息子が生きるか死ぬかという状態で親がその前でいるわけですから、加害者はまだ若いから、とか言われて、処罰についての意見は私の息子も安全確認を怠ったと書かされただけで、何も言っていない調書となりました。
それで、加害者は20万円くらいの罰金となったんですが、それ以降は一切見舞いにすら来なくなりました。今思えば、きちんと処罰をしてほしい、というべきだったと後悔してます。向こうにすればまだ刑事処分が確定していなかったからなんですよ。』
この方は高等検察庁に後日、あまりにも軽すぎる刑罰であるとして、抗議申し入れ書を提出されました。

2) 重度後遺症の場合に、事故の捜査がどうなされているのか、きちんとなされているのでしょうか?ここには被害者になってみないとわからない非合理な捜査の現実があります。どのような捜査がなされたか、被害者は後で知る事となります。目撃者がいても加害者の供述に沿う形での捜査がなされる例を見たり、目撃者がいないと加害者の供述に沿う供述調書作成や実況見分をしているのが実情です。手抜きの捜査がなされている現実があるのですが、被害者側の資料は警察はどう集めているのかですが、診断書を取り寄せ、被害者側の調書を作成します。 これを説明します。
-診断書- 
これは警察の捜査が極めて早い段階であるために、病院側には治癒期間は『見込みでいいから早く出すように』との指示があります。大方の医師が見込みで治癒期間は特定できないと思っているのですが、これは実情では『3ヶ月以上の加療を要する』とか書いた診断書を警察へ提出する処理システムとなってます。
問題はそれ以上治療していても、あるいは植物状態であって、家族が夜も寝ずに介護している被害の実態があっても、それが出ないことです。場合によったら、診断書の書き方で、それほどひどくないような症状と見受けられるケースすらあります。要するに警察が把握する被害者の症状は実は被害者側にとって、あまり説得力の無い捜査の資料なのです。
-被害者調書-
警察は事故後、病院に搬送された被害者の処罰感情や加害者の対応について、調べます。いわゆる被害者調書といわれるものです。
問題なのはまず、事故から大分経ってから調書作成となるので、被害者側の思いと捜査側の思惑とが違うことです。事故当初は家族はどうして事故が起こったのか、加害者の過失がどういうものか、加害者を正当に処罰して欲しい、と思ったり、真実が何か知りたいと思う気持ちが激しいほどあります。これに対して、警察の対応は事故から相当期間経ってから、病院に連絡してきたりします。事故の内容がどうか聞いても、捜査中なので詳しくは教えられないと答えるケースが多くなります。実は加害者の供述どおりとしているケースであるために、被害者側からいえば、証拠があって加害者の供述どおりとしているのか、疑うような内容だからです。
第2の問題は重度後遺症の家族は事故態様や原因について、エネルギーを費やす時間的余裕や労力は無いのが実情です。介護や行政の窓口で右往左往する毎日が続いています。こういう中で家族の心情は被害者の家族へから慈悲的な気持ちになってますから、実際には『厳しい厳罰を』となるようなものとはなりにくい面があります。こういう心理というか、微妙な雰囲気というのを警察も察すべきでしょうが。家族などのこういう心理状態において、いきなり警察が事故状況も詳しく教えないシステムの中で『加害者の処罰をどう思うか』と聞かれても答えようが無いのです。
これは捜査中や起訴処分前では、捜査情報が公開禁止となっており、捜査官が事故の内容や目撃者も教えれないという不合理なシステムがあることも原因です。これが第3の原因ともいえる捜査情報公開禁止制度です。裁判所と検察庁と弁護士会とで作成している『司法事務協議』というのがありますが、司法の世界では当たり前の被害者が知りたい捜査情報非公開という談合のようなシステムがあります。
第4の問題は捜査側の士気の無さが根底にあります。交通事故の被害について軽く見る風潮があります。警察の中での交通課勤務警察官の士気のなさは新聞でもとりあげられたほど交通捜査官の8割以上に捜査の士気がありません。捜査にかける情熱がないのです。
もちろん人員が少なく、忙しいこともありますが、法務省の交通事故への『非犯罪化政策』という政策の誤りがあります。交通事故で検挙された加害者は9割が不起訴となってます。これでは捜査警察官が交通捜査に一生懸命になれるわけがないのです。特に、接する機会がほとんどない重度後遺症被害者や家族の捜査の捜査には熱心さを要求するのは無理なシステムなのです。以上、どうして調書や事情聴取の態度が甘いのか、「処罰を厳しく」と記載がないのか、という調書上の記載システムの背景原因です。

-対策-

  1. 家族や被害者としては『被害の実情に合致した処罰を望みます』と言うこと『人生が台無しとなったのですから、それに見合うのは罰金で済むわけがありません』というべきです。そして、もっと重要なのは、『特に重度後遺症の場合の被害は1個人被害ととらえず、家族が全員犠牲となっている現実を司法の人間は知るべきです』と言うべきでしょう。
  2. 『被害の実情として重度後遺症となっている実情がどんなものか』を説明したり、教える必要がいります。
  3. 1人だけではなく、家族がどれほど被害にあっているかの説明し、『事故の被害者は私たち家族も犠牲になっているのですから、それをきちんと刑事制裁の中に取り入れてください。決していいかげんな被害の実態として処理しないでください』と捜査側に言わねばなりません。数人の人生を狂わしている現実があることは理解されていませんから。
  4. 事故の原因も疑う点はすべて言っておく必要があります。これを言っておくと、裏付けをしていない場合に裏付け捜査をすることがよくあるからです。被害者は捜査情報をまったく知らないわけですから、考えられる範囲での事故の原因についての加害者の側の原因についての速度超過や信号無視、前方不注意、携帯電話等で気を取られたのではないか、等言っておくべきです。
  5. どの段階まで、被害者家族は苦情や捜査についていえるか?
    これは検察の処分が決まるまでであればいえます。但し、効果は各段階で何がどう効果があるかは事実によって違いますから、効果を狙って提出すべきですが、重度後遺症の被害の場合は知らぬ間に終わっているということもありますから、捜査の段階がどの段階にあるかを注視しておく必要があります。