事 件 簿
― 検察は悪質なひき逃げをなぜ不起訴とするのか? ―
平成14年2月5日
 

1 最近の相談で気になる事件があります。ひき逃げの不起訴事件です。ひき逃げ事件で、逮捕、検挙、送検を経ながら、検察庁が不起訴処分とする事件が2件あり、2件とも交差点での大型トラックによる左折巻き込み事故です。
ひき逃げ犯は極端に激増中(5年で倍増)であるのに、検挙率は激減しているといわれます。昭和61年まで検挙率は9割台でしたが、その後低下を続け、13年白書によれば、39%と4割を下回ったそうです。ひき逃げ激増や検挙率低下は取締り側にも問題があるのです。
1件は被害者が歩行者で、1ヶ月後に目撃者が出て、業か致死罪及び、ひき逃げで捜査され、業務上過失致死罪は公判中ですが、ひき逃げが不起訴となっている事件です。
 目撃者の話からトラックが特定でき、ひき逃げと判明したものです。被害者がトラックの正面右フロントに衝突しながら、不起訴となったことに相談を受けた私も驚きです。

2 もう1件は名古屋地検の不起訴処分事件で、事故は 信号のある交差点で大型トラックが左折途中横断歩道で、自転車に乗っていた22歳の女子会社員を巻き込み、死亡させ、運転者はその後5キロメートル先のトラック配送センターまで運転を続け、緊急逮捕され、業務上過失致死罪で実刑となった事件です。
問題はひき逃げが不起訴処分となっていた事です。ひき逃げでないのか? 遺族は当初から検察のやり方に疑問をもち、業務上過失致死罪の公判傍聴も欠かさず、検事に対し、ひき逃げについても、起訴してくださいと申し入れました。検事は「トラックに衝突痕とか、明確な証拠がない限り、ひき逃げで起訴は無理」と回答でした。
業務上過失致死罪の裁判が開始され、裁判開始後に、遺族が入手した調書をみても、検察調書の供述では『事故を起こした事を直後に知った』と認めたうえに、裁判の法廷の証言では走行中に人身事故を認識したことを認めているのです。トラックが自転車を車輪にくっつけて走行したため、大きな音が断続的に聞こえていたからです。事故地点より2キロメートル地点で事故を認識してから、事故現場に戻らないどころか、3キロメートルも走行したのですから、ひき逃げとなるはずです。当初の調べでは「事故をおこしたとは思わなかった」、と加害者は否認してましたが、その後に「走行途中に自転車がくっついている事、そして人身事故も起こしたことがわかった」と正直にいうようになったのです。それでも検事が起訴に動かない? 不可解です。
 加害者の供述を見てみても、「自転車に気が付かなかった」「配送センタ-手前で気が付いた」「配送センターの手前でなく、もっと手前で気が付いた」と供述変更があるのです。
 遺族は裁判途中、検察官にひき逃げも起訴してと再三頼みましたが、検察は聞き入れませんでした。理由は「トラックに明確な衝突痕等なければ起訴できません」と。
結局、ひき逃げは起訴されませんでした。遺族は納得できません。13年5月です。
どうして起訴してくれないのか? ひき逃げだ! 加害者本人も認めてる、ひき逃げで処罰出来ないのか? 検察は制裁するためにあるのではないか!副検事の処分は不当!
相談を受け、私は
『検察審査会は素人の集まりであるし、認められても100分の1の確率しかありません』と伝えましたが、遺族の答えは『かまいません。お願いします』と強烈でした。
相談を除いて、正式には?件目となる検察審査会不服申立事件を引き受けました。
半年かけ、CG=コンピューターグラフィックを作り、提出しました。池田さん以来です。
加害者は業過致死罪で裁かれて服役中ですが、遺族は少なすぎる刑に納得出来ないのです。 被害者や遺族がシステムから排除され、裁判官も検察官も遺族の無念には眼を向けない現状のもとで、ここまで遺族が戦っても振り向こうとしたがらないシステムのあり方には、被害者の権利や心情を排除する姿勢というか、「あんたらだけ泣いていればええんや!」とでもいうかのような、冷徹な社会があると感じるのは私だけではないと思います。 被害者を排除し、処理や捜査や裁判をするシステムには分厚い壁があります。
事故交差点で大きな音を聞いたと認めながらも、加害者は「交差点で、大きな異常な音を聞きましたが、パンクかボルトの外れた音と思った」と常識的に通用しない嘘を言い、検察はこれを信用し、追及をしていません。目撃者でさえ、「パンクの音なんかではない」と明言しているのに、検察は加害者の供述どおりとするのです。遺族にしたら、嘘を堂々と認めるなら、「何の為の検察か!」というお気持ちなんですね。正義感のない副検事に代わる現代の水戸黄門がいることを信じて、不起訴不当の申立を先日しました。  
 名古屋の読売新聞の記事があります。最後のコメントを紹介します。集約しています。

遺族のコメント 「なぜこれがひき逃げとならないのか。同じような目に遭っている人が一体何人いるのか? 」

私のコメント 「被害者の遺族の気持ちを無視した検察や裁判所のシステムになっている。ひき逃げ犯は激増する一方で、検挙率は40%以下に低下しており、加害者は知らなかったで通用すると考えている。悪質事故に臨む検察官として当然すべきことをしないと再発すると思う」