被害者の声による民事裁判の革命 平成13年1月18日
 

交通死亡事故の民事訴訟において、逸失利益の金額が被害者の声に応じ、この半年間で増額されてきつつある事をご存知だろうか。
逸失利益は、被害者の年収・就労可能年数・生活費控除・中間利息から計算される。例えば、まだ20年間働くことが可能だったとして、年収500万円、生活費の控除50%とすると5,000万円となるが(5,000,000×(1−0.5)×20= 50,000,000)、そこから中間利息を控除した金員を逸失利益として受け取ることになる。
『中間利息』とは、本来ならば将来受け取るはずの金員をまとめて今受け取ることになるので、本来受け取るべき将来時点までに発生するであろう運用利息のことを言う。
現在、裁判所は、被害者は5%もの高利でかつ複利運用をしているものとして、中間利息を計算している。実際に、被害者側が運用できるのは、せいぜい0.2〜0.3%くらいで、1,000万円単位で10年満期の場合ですら0.3%〜0.4%くらいである。これから先もこの運用率が大きく変わる事など考えられない。であるにも関わらず、裁判所は5%の複利運用ができるものとして、被害者の声を無視して勝手に差し引く計算をするのである。いわゆる5%中間利息控除論である。被害者のお金を無理やり減らしているのである。これは明らかに、加害者優先、被害者虐待、被害者蔑視と言える。不法行為法の理念については、損害の公平な分担こそが優先されるとしているが、裁判所は損保会社の利益を優先し、損保会社の手先となっている。
問題の根本的な原因は、今まで被害者の声が届かなかった事、そして事件の受け皿として、保険会社の代理人が被害者側で交通事故の専門家として引き受けていた事などがある。
平成11年11月に東京地裁、名古屋地裁、大阪地裁の3地裁が共同提言という形をとり、逸失利益の計算方式を発表した。メインの未就労者の逸失利益については平均賃金ライプニッツ方式をとるということであった。もう1つ、5%中間利息論についても触れたが、その内容には失望させられた。
そころが、その5ヶ月後、東京高裁において7歳の男子死亡事例で、4%中間利息論を取る判決が出た。次に、平成12年10月に長野地裁において30才の死亡事例で、残り37年間についての中間利息を3%とした判決が出て、そしてついに、平成12年12月に、津地裁で62歳死亡事例に2%の判決が出た。これこそ被害者遺族による民事裁判の革命である。東京や大阪の頭の固いエリート裁判官の頭も変わらざるを得ないであろう。
今まで過失5割とされ諦めてきた被害者も、逸失利益の計算で、中間利息を2%で計算されれば、自賠責金額を遥かに超える損害賠償金を得ることができるので、中間利息を争うことは、大きく言えば、被害者保護の運動とも言える。中間利息に対する認識は、たいていの弁護士も裁判官も素人と思ったほうがいいだろう。無理と言われても、中間利息2%、いや1%で裁判に臨まなければ、何も変わっていかないのである。
大事なことは声をあげることである。重度障害の場合には、中間利息が変わると、逸失利益の他に介護費用もあるので、金額は倍近く変わってくる。確か今の重度障害の認定最高金額は2億円ほどであるから、単純計算で4億円になる。被害者による民事裁判の革命の日はもう少しである。