8 民事訴訟 裁判官の和解勧告にどう対処すべきか 

 示談をせず、訴訟しても、被害者には次の壁があります。
 示談のひとつである裁判上の和解です。裁判官によっては和解を強要する癖があります。裁判官の立場に立てば、何日もかかる判決を書くのは避け、すぐに終わる和解を選びたいのが本音です。大阪や東京以外の裁判所は、交通事故を専門とする部がなく、一般事件を扱いながら、交通訴訟事件を取り扱っているため和解を無理強いする傾向にあります。判決なら書くのに時間が3日間要するのに和解なら5分で終了するからです。近畿でも神戸地裁、京都地裁はこの傾向が強くあります。まして地方では余計にあります。弁護士も地方では、馴れ合いの雰囲気がありますので、和解が当然という雰囲気です。弁護士を選ぶ時には、訴訟を選択しても和解に陥りやすいことに気をつけましょう。事件によっては、大阪や東京の裁判所で提訴できる場合もあるので、この点もよく検討すべきです。
 しかし被害者が裁判を決意したのは、事故原因や交渉経過や加害者の態度に納得がいかない場合が主で、金額はよくわからないのが本音でしょう。和解するのであれば、裁判はしないのが被害者の本音で、裁判官が和解勧告をしたからといってこれに従うことはありません。
 ただし、裁判官によっては、面子を傷つけられたと思う裁判官もいるので、断り方に気をつけるべきです。まず和解のテーブルにつくのは避けるのがベターでしょう。テーブルにつけば断れない雰囲気もあり、ある程度進行すればもはや後戻りは出来ない状況に被害者が追い込まれます。
 一度和解のテーブルにつくと裁判官は和解を成立させようと必死になります。和解不成立なら裁判官の面子を傷つけ、被害者がこれを打ち切ると、必ずツケは被害者に回ってきます。
 他方、加害者側はどうか? 委任を受けた弁護士は、実質上は損保から雇用されています。したがって、和解については保険会社の弁護士に裁量権がなく、「保険会社の内部決済を要するので会社に聞きます」と言って、一旦和解手続は停止します。しかし、後日になって、損保弁護士の回答は、被害者が期待した数字は出ず、被害者は譲歩させられます。悩むのは被害者側だけです。裁判官の「和解したい」意向が被害者に突きつけられたまま、被害者は悩み続けなければならない被害があります。裁判官の和解勧告は、被害者をさらに傷つけ、困らせる罠のようなものです。
 交通民事訴訟において和解が判決よりいいという場合は皆無です。示談、和解、判決と、段階毎の相場が違うとされていますし、和解で裁判官が呈示する損害項目は、判決である『弁護士費用』と、判決により発生する『遅延損害金』 との2つがありませんから、全体額があまりに低額すぎるのが一般的です。トピックでも何度か指摘しているので参考にしてください。但し、高裁の事件なら別です。地裁の和解は、被害者側が一方的に不利益を受けます。
 和解の裁判官の呈示は損害項目が減り、遅延損害金も弁護士費用もなしです。その上被害者の年収控えめ、慰謝料控えめと、一方的な被害者譲歩で始まります。初めから裁判官は、味方どころか、敵対する関係です。