6 ほかに民事上問題となる点 逸失利益 

 逸失利益算定に多くの問題があります。東西間格差問題、男女間格差問題であり、未就労者の不公平な取り扱いが問題となりました。

逸失利益の東西間格差問題とは? 
 未就労者の逸失利益の計算では東京では平均賃金ライプニッツ方式と大阪の初任給固定ホフマン方式という東西間での計算方式が違っていたために東西で格差問題がありました。平成10年以前には、20歳男子が死亡した場合には東京地裁での判決と、大阪地裁での判決とでは、逸失利益の計算方式が違っていたために2,000万円もの格差が生じていました。
 そこで、平成11年11月に東京・大阪・名古屋の三地裁の統一方式として、平均賃金ライプニッツ方式が採用されることでこの問題は決着しました。 (しかし、その後、中間利息の利率について2〜4%とするとの判決が相次ぎ、5%ライプニッツ方式と異なる判例が10件ほど出るに至りました。しかし最高裁でH17年7月に、法定利率5%によるとの判決が出て、利率論では決着がつきました。その直後H17年8月に『ホフマン方式こそ民法に合致する』との福岡高裁判決が出て、被害者遺族はこのホフマンによる訴訟をするケースが増えています。)

逸失利益の男女間格差問題とは? 
 未就労女子について、従来は女子平均賃金が基礎年収とされていました。しかしこれは憲法14条の平等原則に反し、差別となるのでないかと論じられています。男女雇用機会均等法の下、逸失利益の計算として女子平均賃金により計算すべきかどうかが問題となります。男女間の平均賃金に厳然とした差が存在することは事実であり、裁判実務上、年少者の逸失利益の算定にあたっては、男女の各平均賃金を基礎にするのが一般でした。しかし現に稼動している者の間で賃金格差があることと異なり、年少者の逸失利益の算定結果に男女間で差異が生じることは、性別で年少者の未知の発展可能性に差異を設けて、一方的に差別することを意味しますので、この点に着目し、男女平等原則に従う画期的な判決が平成12年7月4日に奈良地裁葛城支部で言い渡されました。14歳女児について女性平均賃金によるべきでなく、男女の平均である全労働者平均賃金によるべきであるとして、逸失利益の計算において、男女格差をすべきでないとしたものです。平成13年3月9日にも東京地裁で、11歳女児死亡事例で「全労働者平均賃金をもとにする」との判決が言い渡され、全国的な流れとなってきました。